46年の歴史に幕 自然学校で利用の教育施設 200万人以上利用「再び子の声を」

2024.04.09
地域注目

辞令交付などが行われた閉所式=2024年3月28日午前10時13分、兵庫県丹波市青垣町西芦田で

兵庫県内の小学5年生の自然学校や、同県阪神地区と丹波地区の交流事業に使われた青少年教育施設「丹波少年自然の家」(同県丹波市青垣町西芦田)で3月28日、閉所式が行われた。正規職員8人に免職などの辞令が手渡された。1978年の開設から46年、200万人以上が訪れた施設は丹波市に移管され、市が後継運営事業者を探す。

丹波市、丹波篠山市、尼崎市(2023年3月脱退)、西宮市、川西市、伊丹市、宝塚市、三田市、芦屋市、猪名川町で構成する「丹波少年自然の家事務組合」が運営。閉所式は、林時彦組合管理者(丹波市長)と片山則昭組合教育長(市教育長)が出席し、辞令を交付した。

林管理者は「職員の皆さんにご迷惑をかけることになった。最後までよくやってもらって感謝している。この施設が途絶えることのないようやっていきたい」と謝辞を述べた。片山教育長は、バスケットボールの社会体育で利用した思い出に触れ、「阪神間の方からも利用しやすいととても評判が良かった。閉所は残念だが、地元が言っておられる、子の声が聞こえる施設に向かえれば」とあいさつした。

職員11人のうち、施設管理の3人が会計年度職員。正規職員8人のうち丹波市に2人、丹波篠山市、三田市、西宮市に各1人が新採用される。

民間に再就職する、勤続35年の古西敏也所長(55)は「閉所は非常に残念だが、施設が残り活用されることに期待している。再び、子どもの声が響きわたる施設になってほしい」と語った。

解散に伴い、構成市町などが拠出した約3億1000万円と建物を丹波市が引き継ぐ。土地は、西芦田自治会と、西芦田外二区林野管理組合と新たに市が賃貸契約を結ぶ。市は2024年度に、事業者を公募する予定。

敷地面積約15万平方メートル。鉄筋コンクリート造3階建ての本館(延べ床面積4670平方メートル、宿泊定員270人)、センターロッジ(同993平方メートル、同86人)、ログキャビン(同478平方メートル、同88人)、体育館、共同炊事場、3つのグラウンド、キャンプ場などを備える。

同施設は1972年、阪神地域と丹波地域との間で「阪神丹波連帯都市群構想」が提唱され、「阪神丹波地方行政連合協議会」を組織。77年度に約5億1800万円を投じ本館やキャンプ場などが整備された。

88年度から自然学校の受け入れを開始。90年度にセンターロッジ、ログキャビン、体育館、野外炊事場などに11億3000万円あまりを投じて整備した。自然学校の利用は、19年度(令和元)に117校と過去最多(この年の県内の小学校数は761校)。県内類似施設で最も多い3万8912人を受け入れた。

ところが、21年2月に尼崎市が、23年度末で組合脱退を表明。年間1億円余りの組合運営経費の負担の在り方を巡って意見がまとまらず、組合解散が決まり、施設も閉所することになった。

組合解散後は、地元の借地の上に建つ建物の除却を巡り、契約書の文言の解釈で再び対立。4億円とも目される費用を組合が負担する必要はなく、市民から不適正な支出に当たると訴訟を提起される法的リスクがあると一部の首長が主張。一方、長年、土地を借りながら、地元に除却の責任を負わすのは道義的に問題で、行政の責任で行うのが社会的正義だとする首長とで主張が対立した。丹波市が地権者と新たに契約を結び直すことで、この問題に終止符を打ったが、終始、自治体間の思惑で揺れ動いた。この間、ほとんど地元や職員に対する説明が、市からなされることはなかった。

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