「余命半年」仲間励ます演奏会 シニア楽団 「奇跡起これ」共に舞台に

2024.06.01
地域注目

病を押し聴衆の目の前で尺八を吹く竹村さん=兵庫県丹波市柏原町柏原で

がんで余命半年以内と宣告を受けた仲間を音楽で元気づけようと、兵庫県丹波市の高齢者楽団「丹波シニア・アンサンブルクラブ」が、同市内で演奏会を開いた。「一日でも長く、音楽が楽しめる元気な体でいられるように励ましたい。奇跡起これ」の願いを込めた企画に、闘病中の男性楽団員の友人知人が多数駆け付け、立ち見客が出る大盛況。アンコールまで全11曲舞台に立ち続けた楽団員(80)は「宣告から2か月半が過ぎたけれど、こんなにみんなが思ってくれている。頑張らないと」と、思いを強くしていた。

2015年の発足時からのメンバーで、都山流「師匠」の資格を持つ尺八のほか、ハーモニカ、打楽器担当の竹村重雄さん(80)。昨年12月ぐらいから夜眠ろうとすると胸が苦しくなり、病院で精密検査を受け3月8日に「ステージ4」のすい臓がんで「リンパ節転移も見られ、手術困難で余命6カ月以内」と宣告された。

それから2カ月半。声がかすれ、体力の低下を実感している。2度、抗がん剤治療をしたが、起きられないほど副作用が強く、現在は治療を一時中断。体へのダメージと効果を見極め、治療を再開するか中止するか、決断を迫られている。

演奏を終え、安どの表情を浮かべる竹村さん

28人の楽団員の7割が70代。大病が身につまされる世代。余命宣告を受けてからも、変わらず紳士的に明るく振る舞う姿に楽団員たちが演奏会を開こうと提案。普段は時間をかけて曲を練り上げるが、今回ばかりは猛練習し、3カ月で仕上げ、本番に臨んだ。

楽器紹介コーナーで河口代表に最前列に呼び入れられた竹村さんは、尺八で河口結子代表(ピアノ)とのデュオで、竹内まりやの「いのちの歌」を演奏。サビで大きく盛り上げ、ビブラートをきかす尺八歴50年のダイナミックな演奏、喉の不調で時折かすれる切ない音色が曲の情感を増幅させ、聴衆の涙を誘った。これまで楽団で取り上げたことがなかった。「こんなことになって、いっそう沁みる」と、竹村さんが演奏を希望した。

1人でも演奏を成立させる実力がありながら「みんなで合奏をする楽しさを味わいたい」と入会。「息が合う以上のものがある。違う音が聞こえたりするのが楽しい」とアンサンブルの面白さを語る。最後列から、仲間の演奏を支え、アンコールの演奏を終え、この日初めて、安どの笑顔を浮かべた。

竹村さんを囲み、「がんばれがんばれ」とエールを送る丹波シニアアンサンブルのメンバーたち

河口代表は「素晴らしかった。演奏以上のものを頂いた。これで一緒に演奏するのが最後だなんて思っていない」と、音楽を愛し、音楽を友とするよき先輩の生きざまを目に焼き付けた。

世話人の足立ちひろさんは「今年もう2つ、発表の場がある。一緒に舞台に立ちたい」と話した。

終演後ロビーで「がんばって」「あきらめないで」と、次々声をかけられ、握手を交わし、やわらかな笑顔で応じた。

竹村さんは、地元にある戦国時代の遺構、明智光秀ゆかりの国史跡・黒井城跡(356メートル)への登山を日課にしており、登頂回数は2880回を超える。現在も体調と相談しながら登っている。山頂でほら貝を吹き、登山客を楽しませていたが、近ごろは重いほら貝を山頂まで運ぶのがきつくなり、代わりにオカリナなどを吹いている。

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