家の歴史「次代へつなぐ」 地区限定の空き家相談窓口開設 きめ細やかに移住支援

2024.06.12
丹波篠山市地域

泊まれる学校おくも村を拠点に、大芋版空き家相談窓口「YAMORI」の取り組みを始めた加藤さん=兵庫県丹波篠山市中で

兵庫県丹波篠山市大芋地区の活気あるまちづくりを進めている組織「大芋活性化委員会」は、増加傾向にある同地区への移住希望者に対応しようと、同地区に特化した空き家相談窓口「YAMORI」を「泊まれる学校おくも村」(旧大芋小学校)内に開設。空き家を有効活用して移住促進を目指す取り組みをスタートさせた。すでに行政が空き家バンクや移住相談窓口を開設しているが、同窓口では、地元住民の人脈やネットワークを生かし、移住希望者と空き家所有者とをストレスなくマッチングし、移住後も地域の暮らしにすぐに溶け込めるよう、きめ細やかで迅速な支援を展開していく。

昨年7月、同委員会が地区内約60軒の空き家所有者に意向調査を行ったところ、40軒から回答があり、「活用してもらったらよい(賃貸、売買)」との声が多くを占めた。一方で「愛着があるので、そのままにしておいて」との回答もあったという。

「人が住まなくなった家はすぐに傷んでしまう。再び居住する際に大きな改修費がかかってしまわないよう、すぐに住める物件として管理していくことが大切」と話すのは、同窓口代表の加藤俊希さん(30)。2021年9月、大阪から移住し、昨年度まで地域おこし協力隊として「空き家を資産に」をテーマに活動してきた。その成果物として昨秋、市野々の築約130年の古民家を改修して移住希望者のための「お試し住宅」(旧西村家)をオープンさせた。

活動の一例として、移住希望者にお試し住宅で半年から1年間ほど田舎の生活を体験してもらっている間に、空き家物件を紹介し、その所有者や地域とのマッチングを図るという流れを想定している。

加藤さんは、「所有者には、大切な家の歴史を次世代につないでほしいという気持ちがあり、地元住民には、地域づくりに参画してくれる人に来てほしいという思いがある。所有者の事情や思いをしっかり聴き取り、家の歴史や思い出を生かした活用のアイデアを提案したい。また、そんな家を大切にし、地域で楽しく暮らしてくれる移住者とのマッチングを図っていくことが重要」と力を込める。

「YAMORI」は、古くから人家を主なすみかとし、住人を悩ます害虫から家を守っている身近な爬虫類ヤモリにちなんだ。「大切な家のことを気軽に相談してもらい、管理の依頼もしてもらいたい」との思いを込めた。

同地区の人口は約700人、高齢化率52%超。毎年約20人が減少している過疎化の只中にある。2060年には270人程度になると予測されており、集落消滅の危機感を抱いた同委員会は、まちづくり計画の重大施策の一つに「大芋へUターン・移住する人をみんなで応援しよう」を掲げ、40年先の目標人口を500人に設定している。

同窓口開設の活動もその一環で、県と市の「持続可能な生活圏」形成支援事業(3カ年)の助成を受けて行っている。

地域団体による空き家相談窓口の開設は市内初。

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