特産の「みそ」継承を 神戸大学がプロジェクト始動 学生の課題解決案実践へ

2024.07.19
ニュース丹波市地域地域注目

無添加で体に優しい「おおじみそ」

神戸大学が今年度、兵庫県丹波市春日町大路地区住民が原料の生産から加工までを手がける「おおじみそ」の維持、継承方法を考えるプロジェクトを始動させた。同地区でみその製造は20年近く続くが、生産者の高齢化や原料の供給が安定しないといった課題がある。学生が年間を通じ、みそを生かした加工品開発や販路拡大などを模索する。同地区自治協議会中山間特産加工生産部の西山克巳部長(67)は「若い人の力添えが、おおじみその知名度を高め、みそ造りに参加していただける人を増やすきっかけになれば」と期待する。

中山間特産加工生産部のメンバーから生産の現状を聞き取る神戸大生ら=兵庫県丹波市春日町松森で

中山間地域で特産物の生産を支援する国の補助金交付を機に、みそ製造が始まった。原料は白大豆か青大豆と、前年に収穫した古米、塩、こうじ菌。白大豆は地区内の全8自治会で栽培する。無添加で体に優しい。

現在は、道の駅「丹波おばあちゃんの里」(同町七日市)で年間約3トンを製造する。うち半分近くは市内の学校給食センターに出荷。おおじみそを使ったみそ汁は子どもたちから好評という。同道の駅など同町内を中心に販売している。

一方、加工に励む同部のメンバー17人の平均年齢は70歳以上で、担い手がいない状況。近年は天候不順により、白大豆の生産量が安定せず、需要が高い黒大豆の栽培を選択せざるを得ない生産者もいるという。加工設備の老朽化も進む。

そんな中、同大の学生が昨年度から、移住や新規就農の状況を調査するため、同地区に足を運ぶようになった。みそ製造の課題も知り、「一緒に解決策を考えたい」と、農業や地域課題について考える授業「実践農学」の一環でプロジェクトを発案した。2月には、学生がみそ造りを体験するワークショップを開催。持続可能な地域づくり活動に取り組む地域や大学、企業を支援する県の「ひょうご絆プロジェクト」にも採択された。

オンラインを活用した学生と住民の顔合わせを経て6月29、30の両日、2年生7人が同地区を訪れた。泊まり込みで農家や同部会のメンバーから製造、出荷の現状などを聞き取った。白大豆の栽培も体験。移住者との交流会にも参加した。

聞き取った情報などを踏まえ、今後、どんな取り組みができるかを学内で検討する。オンラインで住民と意見交換を行い、秋から冬にかけて学生が考案した取り組みを実践する計画。

ある学生は「食材と合わせれば味がさらにまろやかになっていた印象」と話す。また別の学生は「地域に根づいているけれど、ネットで調べると情報が出てこない。だからこそ可能性を感じる。情報発信で知名度上昇に協力できるかも。そのためにもまずはみその知識を付けないと」と意気込んでいる。

 

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