「中井権次」 の名で寺社の飾り彫刻などを手がけた柏原の彫刻師、 中井一統の作品を写真集に収録するため、 プロ写真家の若林純さん (55) =東京=がこのほど、 1週間かけて丹波市、 篠山市の社寺などで撮影を行った。 近畿地方に残る彫刻作品を掲載した写真集が、 8月ごろに刊行される予定で、 一統の作品もその中で紹介される。
中井一統の調査研究を続ける元高校教諭の岸名経夫さん (丹波市柏原町柏原)、 進藤凱紀さん (同市氷上町新郷)、 村上和謙さん (西脇市) らが案内した。 3人らの活動を紹介する丹波新聞の記事が、 若林さんの目に止まったのがきっかけ。
若林さんは日大芸術学部を卒業後、 主に国内外の自然、 社寺、 建築物などの彫刻を撮影しており、 本の企画、 執筆もしている。 代表作に、 関東を中心に取材した 「社寺の装飾彫刻」 (日貿出版社) があり、 今回はその関西編。 近畿地方に残る社寺の装飾彫刻を集めるなかで、 丹波、 但馬、 丹後、 北播磨などに残る一統の作品約30点を、 写真と文で紹介する。
丹波市では、 五社稲荷 (柏原町柏原)、 高座神社 (青垣町東芦田)、 加茂神社 (氷上町賀茂)、 称名寺 (春日町黒井)、 常勝寺 (山南町谷川)、 愛宕神社 (市島町上垣)。 また、 篠山市では、 5代目正忠、 6代目正貞の銘の入った脇障子があり、 親子による迫力ある彫刻が残る沢田八幡神社 (沢田) のほか、 文保寺 (味間南)、 波々伯部神社 (宮ノ前) などで撮影。 温泉寺 (豊岡市)、 大乗寺 (応挙寺、 香美町)、 金剛院 (舞鶴市) にも足を運んだ。
高座神社では、 梅只敏幸宮司や小寺昌樹筆頭総代が立ち会い、 本殿などの彫刻に改めて関心を深めた様子。 梅只宮司は、 「神社の飾り彫刻に光が当たり、 建築物の再評価につながったらうれしい」 と顔をほころばせる。 小寺筆頭総代も 「先人が苦労して残した宝物を大切にし、 若い世代に伝えたい」 と話していた。
若林さんは、 「同じ一族の作品がこれだけ集中的に見られる地域は珍しい。 一統の作品には、 獅子が歯で噛んでいる状態を表現した獅子噛 (しがみ) が多い。 木鼻にも特色が見られる」 と解説。 「建築物や仏像だけでなく、 彫刻を通してお寺や神社への関心が深まるのでは」 と話す。
案内した岸名さんも、 「私たちの研究に光があたり、 うれしい。 一統の彫刻に多くの人が関心を向けてもらえれば」 と期待している。