今年1月、 小倉百人一首競技かるたの 「第59期名人位」 に輝いた篠山かるた協会所属の岸田諭・名人 (26)=京都市、 篠山市乾新町出身=が、 来年1月11日、 近江神宮 (大津市) で初の名人位防衛戦に臨む。 4年ぶり2度目の挑戦で日本一を手にし、 兵庫県出身者として初の栄誉をつかんだ岸田名人。 名人として過ごした1年の思いや、 挑戦者の須藤恭平・5段 (東京都) を迎えて行う防衛戦に向けた意気込みなどを聞いた。
―名人になったこの1年を振り返って
名人としてたくさんの試合に出たが、 周りの目が変わった。 勝って当たり前で、 勝ってもほめられない。 負けたら 「名人なのに」 と言われる。 それでも出場する意味は、 「負けて笑われるよりも、 負けるのが怖くて出られなくなることが怖い」 ということ。 タイトルを取
ったからこそ、 楽しんで続けてきたことができなくなるのは本来の目的の逆。 今、 強い時にできるだけ多くの人に見てもらって、 一緒に試合をして何かを感じてほしい。 単純に私自身が楽しみたい、 もっと強くなりたい。 それが私のポリシーだ。
―防衛戦に向けて取り組んでいる課題は
競技かるたは、 ちょっとした息遣いで札を取る状態が変わってしまう。 取る前に呼吸が止まっているとだめ。 呼吸を吐きながら待てるということを心がけている。 そんなレベルにやっと到達できた。
―挑戦者について
面識はあるが対戦はないので楽しみ。 「早い」 選手と聞いている。 須藤5段が東西対決で破った相手は大学の先輩なので、 弔い合戦という意味もある。
―どんな戦いぶりを
呼吸さえうまくできれば、 全力が出せる。 こういう取り方もあるのかという技、 びっくりするような技を見せ、 3本連取で寄せ付けずに終わりたい。
―篠山でも教室を開くなど、 子どもたちへの指導に取り組んでいる
技術や取り方を伝え、 地元に還元したいという気持ちが強い。 名人という肩書きがあるからこそ、 子どもたちへの入り方が違うので、 できる限り子どもたちにかるたの楽しさを伝えたい。 高いレベルを目指している子どももいる。 そのためにも、 名人位にこだわりたい。
―防衛戦への意気込みは
防衛という形ではあるが、 守るのではなく、 自分の力を出し切って勝負して、 また1位になりたい。
【きしだ・さとし】篠山小学校1年生の時から競技かるたを開始。 篠山鳳鳴高校ではかるた部に入部し、 各地の大会で活躍する。 大阪大学医学部に進学。 同大学かるた会に所属し、 2009年、 初めて名人戦に挑戦するも、 名人に敗れ、 準名人の座に甘んじる。 2013年1月、 「第59期名人位決定戦」 に出場。 3本連取し、 兵庫県出身者として初の名人位に就く。