原水に水道法が定める基準を超えるマンガンを含んでいる丹波市青垣町東芦田水源に関し、 辻重五郎丹波市長らが20日、 市役所で記者会見し、 同水源の本井戸の水質検査結果を隠ぺいしていたことを明かし、 謝罪した。 これまで市は、 同検査を 「実施していない」 と虚偽の説明をしてきた。 2009年11月18日に実施した検査結果は、 水道法が定める基準 (1リットルあたり0・05ミリグラム以下) の12倍にあたる 「0・60」 だった。
これまで市は、 07年に2度実施した試掘井戸の水質検査の結果は基準未満と良好で、 新水源完成後の12年8月27日に試運転を行った際、 同水源付近の公共施設の水が濁ったことで、 多量のマンガンを含んでいることが分かった―と説明していた。
しかし、 実際は、 09年11月に水質検査を実施しており、 当時の担当職員が検査表を上司に報告しないままファイルにとじ込んでしまった上、 担当係長、 課長も検査結果の確認を忘れていたという。
12年8月の濁水誤送水後の9月上旬には、 その原因を調べる中で09年11月の検査結果の存在を係長以上の職員が確認していたが、 「これまで市民に説明してきたことと異なり、 地域住民の理解を得ることが難しい」 として、 当時の部長の指示を受けて隠ぺい。 その後も水質検査は 「していない」 ことにしていた。
市は現在、 西芦田上水場にマンガン除去装置を取り付ける実施設計業務に入っており、 それは完了させるという。 ただ、 辻市長は、 「新水源関連の事業についてはいったん立ち止まる」 とし、 事業の中止については否定。 「市民の信用を失墜した。 時間はかかるが、 内部の体質改善と再発防止策を点検し、 関係者のみなさんに納得していただける解決策を究明していく」 と謝罪した。
市によると、 昨年末から濁水誤送水の原因を再度確認するための調査を実施。 この中で、 職員からの申し出により、 過去に水質検査をしていたことが分かり、 資料を探したところ、 9日に普段は使わない書庫から結果表が出てきたという。 10日に辻市長に報告。 11―17日まで関係職員に対する聞き取り調査や関係書類の確認をしていた。
本井戸の調査結果は、 09年11月30日付で、 業者から市に届いている。 市は08年から、 関係の自治協議会などと覚書を交わし、「地元理解を得た」 として事業を進めているが、 本井戸の調査結果を正しく取り扱わなかったため、 調査結果が届いた後に覚書を交わした幸世自治振興会 (12年2月) と氷上北土地改良区 (同年3月) には、 正確な情報を伝えていなかった。 市議会からは、 「事実を隠して締結したことになる」 と、 覚書の効力を疑問視する声も出ている。 宮垣昭男・幸世自治振興会長は、 「そんなこととは思わなかった。 理解しがたい面がある」 と述べた。
【東芦田水源】2006年度に策定した水道ビジョンに基づく、 水道施設統合整備事業の一つで、 慢性的な水不足にある春日地域の水を補う目的で12年に整備された。 同水源の水は、 既存の西芦田水源の水とあわせ、 青垣町芦田、 佐治地区、 氷上町幸世地区に給水し、 現在、 幸世地区に給水している桟敷水源地の水は、 天王坂を越えて春日地域へ送る計画。 春日地域へつなぐ管路を整備中で、 計画では15年度の稼働予定。