トルコ第3の都市イズミル在住の主婦、 安田ゆかりさん (45) =氷上町賀茂出身=が、 詩人・谷川俊太郎さんの詩をトルコ語訳した詩集を出版した。 トルコ語訳と、 トルコ語のルビをふった日本語の原文を対にして掲載。 詩の世界に加え、 日本語の音の響きが感じられるようにした。 「トルコに日本文化を伝えることができた」 と喜んでいる。
タイトルは、 「Mavi」。 谷川さんの作品 「あお」 から取った。 エーゲ海の美しい海が広がるイズミルのイメージも重ねた。 谷川さんが、 パウル・クレーの絵に詩をつけた 「クレーの絵本」 「クレーの天使」 の詩集から選んだほか、 谷川さんが40年前に作り、 東日本大震災後に、 再び脚光を浴びた 「生きる」 など、 13編をトルコ語訳し、 クレーの絵も掲載した。
谷川さんから、 「詩は、 書いてある内容だけでなく、 音も大事」 との助言を受け、 トルコ人が原詩を日本語の響きで読めるよう、 「あおのかなたにすけているいろはなにか」 ( 「あお」 より) を 「ao no kanatani suketeyru iro va nanika」 などと、 ルビをつけた。 また、 トルコ人にとって違和感なく読めるよう、 意味は変えず、 文を倒置させるなど、 文法を工夫した。 日本語翻訳の第一人者のトルコ人大学教授らに監修してもらった。
谷川さんは巻頭の辞を寄せ、 「知り合ったトルコの詩人から 『トルコの言葉はとても音楽的で、 普通のことを書いても詩になる』 と聞いて、 とても驚いたのを覚えている。 トルコで翻訳され、 どのように響くのか関心がある」 と綴っている。
「古典や村上春樹ら現代人気作家でトルコ語訳されているものはあるが、 詩集は私が知る限りない」 と安田さん。 「日本文化が好きで、 もっと日本のことを知りたいのに触れる機会がないというトルコの人たちに谷川さんの詩を紹介できて良かった。 評判も良く、 喜んでいる」 と言い、 「世に出る、 出ないは別にして、 トルコ語が身につくので今後も翻訳は続けるつもり」 と安田さん。 「私がやるより、 トルコ人が翻訳した方がいいので、 後に続くトルコの人が出てくることに期待している」 と話している。
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トルコ人の夫と結婚、 2011年から現地で暮らしている。 親日トルコ人、 在イズミル日本人らでつくる 「日本イズミル文化交流友好協会」 が発行元。 同協会の事業の一つとして5万部を制作、 無償配布した。
03年の 「日本トルコ年」 に仕事で関わったのをきっかけに興味を持ち、 05年に観光旅行。 たちまち夢中になった。 09年に首都アンカラの語学学校に通う際の課題が、 「自国の愛の詩をトルコ語訳にする」 だった。 かねてから好きな谷川俊太郎の詩を選んだ。 10年に大阪で開かれた谷川さんのサイン会に行った際に、「いつかトルコ語に訳し紹介したい」 と手紙を渡したところ、後日、本人から電話があり、 激励されたという。
結婚後も翻訳を続け、 2012年に出版が決まったことを受け、 谷川さんから正式に詩の使用許諾を得た。