篠山市当野の大歳神社で6月29日、 「ちまきのお当 (とう)」 の名で伝わる神事が行われた。 獅子舞が巨大ちまきにかぶりつき、 五穀豊穣や無病息災、 子孫繁栄などを願う一風変わった伝統神事。 同神社には正装した氏子らが大勢集まり、 獅子舞の見事なかぶりつきように歓声をあげていた。
同集落の青年団が獅子舞役を務めるのがならわしで、 今年は4人の団員が担った。 神社の軒下には、 前日に氏子当番 (4戸) の住民でこしらえた長さ約60センチ、 重さ5キロ近くもある巨大ちまきがわら縄で吊るされた。
神社本殿で一瀬貞明宮司が祝詞 (のりと) を奏上し、 集まった氏子たちにお神酒と洗米が振る舞われると、 神事のハイライトとして青年団による獅子舞が登場した。 笛や太鼓のお囃子にあわせて、 進戸竜也さん (19) らが操る獅子舞が激しく体を揺らしながら境内を回り、 目いっぱい荒ぶってみせた。 ひとしきり練り歩き、 頃合を見計らって巨大ちまきにかぶりつこうとしたが、 氏子らが 「まだまだ」 と制止。 再び境内に戻され、 練り歩くこと数回、 再度かぶりつきに挑戦した。 獅子頭の大きな口で巨大ちまきをがっちりとくわえ込み、 勢いよくわら縄から引きちぎってみせると、 氏子から 「おー」 「よっしゃ、 うまいことやった」 と声があがり、 拍手がわき起こった。
同神事の前後にも、 青年団による獅子舞が、 横笛を吹き鳴らしながら氏子の家 (47戸) を一軒ずつ訪問。 玄関先と荒神がまつられた台所などで鈴を鳴らし、 御幣 (ごへい) を八の字を描くように振りながらお祓 (はら) いをしてまわった。
同神事は昔、 当番の家で行っていたが、 準備や接待が大変なこともあり、 同集落の公民館で実施。 さらに近年、 神事の内容を簡素化し、 実施場所も同神社に移した。 6月下旬の亥日に行ってきたが、 今では亥日に近い日曜日に変更。 いつから始まり、 なぜ獅子舞が巨大ちまきにかぶりつくのかなどは不明という。
獅子舞の大役を務めた青年団代表の進戸俊宏さん (30) は、 「これからも村の先人に教わりながら、 地元の伝統行事を引き継いでいきたい」 と語り、 神社総代の中本光政さん (78) は、 「若い者が村の行事を支えてくれるというのは心強いかぎり。 神事は神さんに対する私たちの気持ちを表す大切なものなので、 絶やすことなく続けていかなくては」 と話している。