国の文化審議会は17日、国登録有形文化財の登録を文部科学大臣に答申し、兵庫県篠山市からは「春日神社本殿」(本郷)が同文化財に登録されることになった。同市内では5件目の登録となるが、同神社本殿の登録には、地元住民たちが中心となって調査を進め、登録への機運を盛り上げてきた。住民らは、「春日神社は地域の心のよりどころ。国登録有形文化財に登録されたことで、より愛着や誇りを持ち、次代に受け継いで行けたら」と喜んでいる。
三間社流造(さんげんしゃながれづくり)の本殿は、弘化3年(1846)の建築。昨年、古材を活用しながら改修された覆屋(おおいや)が本殿を風雨から守る。
最大の特徴は数多くの彫刻が施されている点で、現在の丹波市柏原町を拠点に18世紀中ごろから近代初頭にかけて活躍した彫物師、中井氏の中井清次良正用作の龍や鳳凰などが本殿を飾る。また毎年秋には市指定無形文化財の「本郷春日おどり」が行われる。
国の登録文化財制度は、築50年を経過している建造物で、国土の景観に寄与している造形の規範となっている再現することが容易でない―が対象となる。
登録推薦の所見を作成した神戸芸術工科大学の山之内誠准教授は、「丹波地域の江戸後期を代表する神社建築。さらに非常に多くの精緻な建築彫刻を持つこと、春日踊りの舞台として親しまれていることなどから、基準に該当する」とした。
2010年、地元住民でつくる「草山郷づくり協議会」の環境歴史部会で、文化財登録が話題に上がり、登録に向けた取り組みがスタート。地域住民で、歴史的建造物の保全・活用に取り組む建築士「兵庫県ヘリテージマネージャー丹波地区(H2Oたんば)」の中井章博さん(66)が中心となって本殿の調査を行い、山之内准教授や市教委の協力も得ながら、足掛け5年にわたって、登録を目指してきた。