米映画「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」を観た。ニクソン政権下の1971年、ベトナム戦争についての国防省の機密報告がニューヨークタイムズ、続いてワシントンポストに漏洩。
報告には成果を上げる見通しのないまま戦線を拡大し、泥沼化してきた状況が示され、それまで政府が公表してきたのとかなり異なる内容。激怒したニクソンが記事差し止め訴訟や内部告発者の追及など強権的な対抗措置に乗り出す。
ドラマはワシントンポストの経営、編集陣にスポットを当て、メリル・ストリープ演じる女性社主が編集主幹トム・ハンクスの主張する「真実の報道」か、重役らの「会社経営の安定」か決断を迫られる。
このテーマに並行して、死去した夫を引き継いだ社主が、男社会の中でたじろぎつつ成長していくという女性への視線も、複線的に描かれる。
この文書は2011年、規定により機密を解除され、全文公開された。40年後から振り返ると正鵠を射た内容だったわけだが、政府ぐるみの戦争に対して冷静、客観的に捉えた報告が、よくも部内で成立し得たという事実に感心する。政権への“忖度”によって改ざんされる国さえあるというのに。
しかし米国でも最近いささか事情が変わってきているようで、その意味でもタイムリーな作品である。(E)