社会医学に取り組む
九州大学大学院医学系研究科医療システム学講座助教授
萩原 明人 (はぎはわ あきひと) さん (福岡市在住)
1954年 (昭和29年) 市島町生まれ。 旧姓奥谷。 山東中、 柏原高校、東北大学卒。 関西電力入社。 阪大大学院、 ミシガン大、 フロリダ州立大を経て95年から現職。
大学の法学部に学んだ。 現在は医学部で医療の質などを統計学的手法によって分析する、 社会医学の研究に取り組む。
厚生労働省との共同研究で1000人や10000人を対象に受療行動調査を実施している。 「一人の患者が複数の病院を受診するドクターショッピングが国全体の医療費を押し上げている。 これを減らすためには、 複数受診の原因を探る事が基本になる」 という。
また、 「医事紛争にしても、 その7割から8割が医者と患者のコミュニケーション不足から生じている。 ユーモア、 同情、 共感ということも医者には必要。 人間性の部分が大事になると思う。 何故なら、 ガンや糖尿病など生活習慣病が増えてきた今日では、 抗生物質で感染症をぴたりと治すのが主流の時代とは違って、 父権主義のような権威は通用しないから」 ときっぱり。
大学を卒業後、 電力会社に就職し、 法務部に配属になった。 「ちょうど、 住民から火力発電の煤煙や硫黄酸化物による健康被害について訴えを起こされていた。 被告の会社側の担当になったが、 住民は大気汚染濃度と患者数の関係など徹底した疫学調査結果を裁判資料として提出してきた」 と当時を振り返る。 この疫学調査が今の研究の原点になった。 数年後、 会社を辞めて大学院へ。 アメリカの大学では公衆衛生学、 エイズの研究などにも携わった。 目下、 福岡市の介護保険利用者の実態調査に入っている。
京都府三和町境の市島町戸平から小、中、 高校に通った。 「戸平峠は、 今のようなトンネルはなく、 帰りが遅くなると自転車を押して峠道を帰るのが不安でした。 反面、 四季の美しさやのどを潤した山水の味が忘れられない」 と故郷を思い出す。
「丹波の古道」 を書いた奥谷高史さん、 「聞き書丹波の庶民史」 の著者奥谷松治さんはいずれも祖父の弟。 「こつこつと研究する姿勢を受け継いでいるのかな」
(臼井 学)