幼いころの夢育てる
京都薬科大助教授 桑形 広司 (くわがた ひろし) さん (篠山市から通勤)
1954年 (昭和29年) 篠山市小原生まれ。 篠山鳳鳴高、 京都外国語大学ドイツ語学科、 同大学院修士課程修了。 京都外大、 京都薬科大非常勤講師を経て、 91年から助教授。 大芋小PTA会長など歴任。
大学でドイツ語と外国文学を講じる。 ドイツ文学のなかでも興味を持つのは、 グリム童話。 「『狼と七匹のこやぎ』 『白雪姫』 などよく知られている作品には、 人間の死とか殺すという行為など今世間で、 悪いといわれる場面がたびたび登場します。 子どもには、 刺激的であっても、 善と悪の対比から学ぶべき事は多いはず」 と話す。
「ドイツの民俗学などを研究していると、 日本で迷信といわれることも犯罪抑止力につながる面もあると思う。 たとえば、 神木が倒れたら崇 (たた) りが起こるというのも、 自然崇拝、 自然への畏敬 (いけい) の念を表現する言葉と思う。 教育のなかで、 悪いことも小出しにすべき」。
教える側からみて気になるのは学生の反応。 「無味乾燥な語学の授業を少しでも面白くしたいと工夫している。 阪神が優勝した翌日の授業には、 甲子園球場で買った阪神のユニホームのハッピを着て教室に登場したが、 カメラつき携帯電話のフラッシュの光で教室は騒然となりました」 と苦笑。
「私が常々阪神ファンと授業で言っているので、 学生は 『先生、 今日は何かやるぞ』 と思っていたらしい。 このあと、 『英語ではタイガー、 さてドイツ語でトラは何といったかな』 などと尋ねると興味がわくようです」
「子どものころに、 祖母から三菱商事のデュッセルドルフ支店に勤務している遠縁の人がいると何度も聞かされていたことが、 ドイツへの関心を向けるきっかけになった。 NHKのドイツ特派員にあこがれ、 自分もなりたいと思った」 という。
その芽は高校時代に膨らみ、 NHKラジオのドイツ語講座で勉強。
「『なぜドイツ語をやるのか。 篠山に帰って英語の先生になってくれ』 という大学生の時に亡くなった父の言葉が、 ふと浮かんでくる。 英語の先生にはなれなかったが、 父の願いを半分実現できた」
(臼井 学)