岡山大教育学部教授 山口茂嘉さん

2003.03.23
たんばのひと

丹波のくらし原点に
岡山大教育学部教授 山口茂嘉さん (岡山市在住)
 
(やまぐち・しげよし) 1943年 (昭和18年) 氷上町上新庄生まれ。 氷上中、 柏原高校、 岡山大教育学部卒業後、 広島大大学院教育学研究科修士課程修了。 93年から岡山大教育学部教授。
 
 生涯発達心理学が専門。 中央教育審議会 「少子化と教育に関する小委員会」 の専門委員も経験するなど大学の内外で積極的に発言。 現在の親子関係、 家庭教育を心理的側面から分析する。

 委員会のまとめとして1人1200字のレポートを書いた。 「内容は子どもの貢献感の育成と親子関係が基本。 貢献感は生きることの本質でもあり、 家庭教育のポイント。 学ぶことと相手の役に立つことが車の両輪として機能していることが子育てには重要」 と力説。
 「大学に合格したとき、 うれしいけど離れていくのが寂しいとささやいた母親の言葉が耳に焼き付く。 依存があって初めて親子の自立が生まれる」 と経験から語る。 「頼み上手、 任せ上手、 認め上手の親に」 と自論も。
 「兄弟は一番身近なライバル。 私の場合、 兄は物理の道へ進みましたが、 兄には勝てないと思い、 私は心理学を専攻、 弟は生物を学びました。 住み分けですかね」 と苦笑。  少子化によって、 家庭で兄弟姉妹が切磋琢磨して生きる知恵を育む機会が乏しくなるなか、 地域の役割が重要視される。 自宅のある岡山では、 親子クラブと子育てを終えた女性で作る愛育委員会が協力し子育てを担う。 この活動を相談活動などでサポートする。
 自然を愛したロマンチストで、 自宅に農事研究所を開いていた父武男さん。 地域の人たちが良く出入りし、 自身も子ども時代に大勢の人と交わった。 「学校から帰ると、 父の書斎に行くのが楽しみだった」。 中学二年のとき、 頑強だった祖父が突然亡くなり、 大きなショックを受けた。 この事件が今の道に進むきっかけになった。
 「死は最後の教育といわれる。 死を受け入れることが一生懸命に生きる基本。 病院で生まれ、 病院で亡くなるという現在は、 人生の最初と最後の場面がカバーされている」と話し、 「3歳、 9歳、 14歳から17歳の3段階で子どもの心理が変化する。 私も高校時代に生きるという意味を見出すのに悩み、 父の書斎で吉川英治の 『親鸞』 などをむさぼり読んだ。 丹波でのくらしが今の私の原点」と結んだ。

(臼井 学)

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