バイオリン奏者 多川智子さん

2007.03.12
たんばのひと

ドイツ留学で再出発
(たがわ・ともこ)東京都在住

 一九八二年 (昭和五七年) 丹波市柏原町生まれ。 柏原中学卒業後、 東京芸術大学付属高等学校入学、 同大学音楽部卒業。 現在東京フィルハーモニーのエキストラ契約
  

  「こんなに努力して頑張っても、 音楽家はプロとしてなかなか自立が難しいということを、 不公平だと思うこともありますよ」 と、 言いながらも、 一流オーケストラのバイオリニストになりたいという夢はあきらめ切れず、 今春よりドイツ留学を目指すことにした。 「帰国しても何の保証もありません。 一学生として再出発です」。
 大学を卒業して二年、 人気テレビドラマ 「のだめカンタービレ」 のオーケストラ奏者の一員として出演したり、 ポップスの演奏にも関わったりして、 「日々結構楽しいので、 このままいこうかな、 なんて思うこともあったんですけど」。 最近、 オーケストラで協奏し、 「自分の実力はまだまだ」 と思い知り、もう一度クラシックを勉強したいと留学を決意した。 日本人は正確に弾く技術のレベルは高いが、 感情表現に乏しいといわれるため、 感性を磨いてきたいという。 「舞台で演奏するときの感動はとても大きくて、 どんな苦労も乗り越えられます」。
 三姉妹の末っ子で、 四歳からバイオリンを習い始めた。 上の二人はピアノ、 智子さんはバイオリンと、 週末は一家五人揃って、 父親の運転する車で京阪神へレッスンに通った。 「放課後友だちと遊びたいのに、 毎日四時間、 母との稽古がいやで、 近くの木の根センターへ逃げ隠れたこともありました」。 が、 みるみる頭角をあらわして、 九四年全日本学生音楽コンクール小学生の部大阪大会 (西日本) で優勝。 その後も次々といろいろな賞をさらった。
 高校進学で離れた丹波。 東京は音楽家の卵が大勢いるので余り珍重されないが、 関西方面の演奏はとても楽しく、 丹波の人たちの温かい応援が何よりの励ましという。 「私のバイオリンは家一軒が買えるほどの値段なんですよ。 普通のサラリーマンの父が三姉妹を音楽家に育てることは生易しくなかったと思います。 両親には本当に感謝をしています」。  (上 高子)

 

関連記事