山里の暮らし短い言葉に
「里のススキに招かれて 紅葉が山からおりてくる」
木々が色づき始めた今田町の今を表現した言葉―。山里の暮らしのシーンを短い言葉にし、和紙などに毛筆でしたためている。これらを「遊び字 遊び文」と名付け、箕面や三宮、高松などで作品展を開催してきた。5年前からは、自宅のギャラリー「ぶんあん」で春から秋の期間、展示会を催すなど言葉と文字と戯れる日々を送っている。
今田町四斗谷生まれ。30年間、コピーライターとして言葉を生業にしてきた。
「読書好きの父親の影響で本に囲まれて育った。お店が一軒もなく娯楽がなかったので自然と読書に親しんだ」と振り返り、「ジャンルを問わず読み漁った。時折、親がしまい込んでいた子どもが知らなくてもよい本も読んだりして」と笑う。
1999年、息子が大学へ入学し手が離れたこともあって、豊中から母親と一緒に帰郷。「さあ、2人で楽しい日々を過ごそう」としていた矢先、母親にがんが見つかった。その2年後、78歳で他界した。「ひとりになってしまい茫然としました」。そんな日々の中、母親が生前、天気の良い日に「お日いさんが好き。ありがたい、ありがたい」とつぶやきながら、家の周りをおぼつかない足取りで散歩する情景を思い出した。気持ちを休めようと、母親の口癖となっていたこの言葉を毛筆でつづってみた。「不思議と心が安らぎました」。「遊び字 遊び文」をつづり始めるきっかけだった。
「今田の美しい四季の移ろいが私を楽しませてくれる。季節は毎年巡って来るが、雰囲気は毎回違う。その変化を感じ取り、のんびりと言葉で表現していきたい」。71歳。