小中学校の給食費の滞納額が全国的に増え、丹波地域も例外でないというニュースは全く嘆かわしい。本当に困窮している家庭には救済策もあろう。しかし「学校が面倒見て当たり前」「払うのは損」と思っている親がいるとすれば言語道断である。▼昭和十四年、今よりはるかに貧しかった時代の話。沼貫村(現丹波市氷上町)で、夫と死別し、たくさんの子供を女手一つで育てている女性が役場に来て、風呂敷包みからおずおずとわら草履十足を取り出した。▼「村からのありがたい扶助料のお陰で、親子がお腹を空かせずに毎日を送らせていただいております。何か御礼をと思いますが、貧乏人の私には、夜なべで作ったこれくらいしか差し上げるものがございません」。▼現在の「生活保護」に比べ、もっともっとささやかな扶助だったろう。にもかかわらず、この母は「子供が成長いたしましたら必ずご恩返しをいたさせますので」と言い切っている(当時の丹波新聞より)。きっと彼女は、事あるごとに子供らに言い聞かせ、やがて子供らは立派にその命を果たしたことだろう。▼「教育の荒廃」が叫ばれ、百の議論がなされているが、最も大切なのは、そういう当たり前のことを、当たり前に子供らに示せる、そういう親たちがいなければならないということではないか。(E)