兵庫県丹波篠山市藤坂の春日神社でこのほど、豊作を祈願する神事「御田植祭」が行われた。本殿下の舞堂で、禰宜と呼ばれる氏子の当番が田起こし、代掻き、田植えの所作を披露し、集まった村人たち約50人が豊作を願った。
同神事は毎年5月10日前後の日曜日に実施。60―70歳までの氏子が禰宜を務めるのが習わしで、現在7人で行事を引き継いでいる。同集落にある、県の天然記念物に指定されている大カツラの生命力にあやかり、苗に見立てたカツラの小枝を植える所作を行うのが特徴。以前は、棚田に見立てた本殿の舞台で行われていたが、現在は舞堂に移している。
本殿で神事を行った後、舞堂に禰宜が上がり、木彫りの牛の面を付けたり、鋤や鍬を持った農民役の禰宜らが舞堂を周回しながら田起こし、代掻きを表現。禰宜の一人が「おくの田んぼ くちの田んぼ 尺の穂だれに 寸の米 ところ繁盛 殿よかれ」という祭詞を繰り返し唱えた。最後に田植え役が苗に見立てたカツラの木の枝の束を植えるように丁寧に床に並べ置いていった。
自治会長で、禰宜でもある藤田福夫さん(66)は、「禰宜を務める世代が少なくなっているが、古くから続く伝統を絶やさずやっていきたい。豊作を期待したい」と話していた。