兵庫県篠山市内の一部地域で、夕方までの預かり保育がない公立幼稚園(4、5歳児対象。午後1時半まで)の園児数が減少し、保護者から存続が危ぶまれている一方、同じ地域内にある私立の認定こども園では定員を超えるという状況が続いている。共働き世帯の増加に伴い、多くが夕方まで利用可能なこども園に通っており、共働きでなくとも園児数が少なくなった幼稚園を選択しなくなるという循環に陥っていることが原因。市は幼稚園の保護者の声を受け、新年度早々にも幼稚園とこども園、保護者、地域住民を交え、両園の今後のあり方について話し合う会議を立ち上げる方針を固めた。
会議立ち上げの方針は、市役所のすぐ近くにある篠山幼稚園の保護者らがこのほど、酒井隆明市長らを同園に招き、夕方までの預かり保育の実施を求めたり、今後の方針を尋ねるなど懇談したことがきっかけ。
同幼稚園は、昨年度の卒園生が1人。今年度は5歳児が3人、4歳児が7人だが、新年度の入園予定は3人。新年度、同園への入園対象者は56人のため、篠山幼稚園を選択したのはわずか17・85%となり、市の中心部にあって市内の公立幼稚園の中で下から2番目の園児数となっている。
保護者らは、園児数の現状を、▽共働き世帯が増え、午後1時半までの幼稚園は難しい▽預かり保育がないため断念した▽小学校に入学した時のことを考えると、人数が多いこども園に行ったほうが良いと考えた―と分析。その上で、▽幼児教育を受けさせたいが、時間的に厳しい保護者を助けてほしい▽共働きでない世帯でも通わせることができ、困った時のサポート体制を―と呼び掛け、「園児を増やして、友だちとのかかわり方をたくさん経験させたい」と訴えた。
解決方法として、同幼稚園での預かり保育の実施を求め、「行政で難しいなら、幼稚園の一室で民間が預かり保育を実施してもらえないか。競合ではなく連携を」などと提案。現在は受け入れていない3歳児に門戸を開くことも投げかけた。
市教委によると、市内の公立幼稚園13園で預かり保育を実施していないのは、篠山を含めた3園のみ。それぞれの園区に私立のこども園が2つあるためで、「公と私のすみわけであり、公からすれば、私立に保育を担ってもらっている状態」と説明する。
一方、両こども園には3―5歳児で保護者が働いていない場合でも受け入れる「1号認定」(午後1時半まで)があるが、ともに定員に達し、落選した園児もいる。
保護者らは、「決してこども園を否定するのではなく、定員を超える応募があるこども園と、わずかな人数の幼稚園という状況を改善してほしい」といった意見や、「親も自分も篠山幼稚園出身で子どもも通わせたい。けれど、子どもが入園するときに同級生がいないとか、1人だけとなれば、人数が多いこども園を選ぶしかなくなる。現状に目を向けて」などの声が上がった。
酒井市長は、「公私が併存している地域。誰もが100%満足できる方法はないかもしれないが、保護者、地域、園などの関係者を集め、今後の方針を検討する場を設けたい」とした。