謎めいた「でこぼこさん」

2019.07.28
未―コラム記者ノート

 丹波篠山市波賀野新田の秋葉神社の夏祭りに登場する頭部だけの木彫り人形「でこぼこさん」を取材した。人の倍近くある大きな顔は、やさしい笑みをたたえているが、見ようによっては少し不気味にも感じる。住民たちは、今年もでこぼこさんを子どもみこしに乗せ、「わっしょい」の声を響かせながら、ひなびた街道を練り歩いた。

 まったく謎めいた人形で、住民に説明を求めても「知らんで。毎年みこしに乗せることになっとるんや」と口をそろえる。村の高齢者に尋ねても、その昔、村が所有していただんじりの梁に取り付けられていた人形だ、ということ以外、不思議な名前の由来も、何の目的で誰がいつ制作したのかなど、あらゆることが「今となっては誰にも分からない」―。

 戦後、短期間のうちに大きく変貌を遂げた日本社会。多くの神事や祭事が地域から消え、あるいは簡素化が進んだ。この状況はやむ気配がない。だからこそ、取材を通してこれらを記録しておくことも小さな地方新聞の役割ではないか、とも思ってみるが、残された時間はあまりに少ない。(太治庄三)

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