兵庫県丹波篠山市福住地区の集落、西野々(42戸)の極楽寺境内で17日、伝統の「盆踊り大会」が行われた。同市の東端で、京都府南丹市の隣に位置し、かつては亀山藩領だった同集落に伝わるのが、浄瑠璃をベースにした無伴奏の「山科音頭」。時代とともに歌い手である「音頭取り」が減少し、一時は絶えていたが、30年ほど前に復活。現在は60―70歳代の2人が口伝えで受け継ぎ、やぐらの上から歌声を響かせる。村人たちはやぐらを中心に輪をつくり、「ほーら、よいっとせー、やっとこせ」と合いの手をうちながら踊っていた。福住地区の宿場町だった古い街並みは、国の福住伝統的建造物群保存地区に指定されている。
市の定住促進事業を活用し、隣接自治会や、お隣の京都府天引自治会、移住者や帰省者にも声をかけ、約150人が参加。会場中央には高さ4メートル近くあるやぐらが組まれ、自治会の老人会、PTA、消防団らが食べ物などの屋台を出し、盛り上げた。
「新修亀岡市史」などによると、江戸中期以降、浄瑠璃を一層世俗化して民衆の生活に取り入れようと、名場面「さわり」に独特の節回しを入れた盆踊り歌が「浄瑠璃口説丹波音頭」とされる。これが亀山藩領だった原山、西野々、安口の3集落に伝わったのが「山科音頭」で、なぜ「山科音頭」と呼ぶのかは不明という。
西野々の音頭取りは、畑和男さん(76)と馬場勉さん(69)。畑さんは「忠臣蔵」を、馬場さんは「阿波の巡礼」を響かせた。馬場さんは10年ほど前、「このままでは村の伝統が絶えてしまう」と、当時90歳近かった村の長老に3カ月がかりで口伝えで教わった。「笛や太鼓もなく、リズムをとるのが難しい。踊りが上手な人の足の動きをみながらテンポを取る」と話す。「幼い頃は本当に賑やかで、踊りもすごく上手な人がおった」と懐かしむ。
畑善継自治会長(65)は、「亀山藩領だった3地区より西へ行くと、線を引いたように山科音頭が伝わっていないのも興味深い」と言い、馬場さんも「『青山藩で歌ったらあかん』という話を聞いたことがある」と話す。なお、京都府天引地区から参加した住民によると、天引には「山科音頭」と節回しが全く同じ「丹波音頭」があるが、音頭取りがいなくなり、今は盆踊りもしなくなったという。
畑自治会長は、「若い人たちに伝統文化を伝え、残していきたい。そのためにも盆踊りを地域の魅力として発信し、Uターンや移住したいと思ってもらえたら。高齢化が進んでいるが、みんな仲良く、助け合える村づくりをめざしたい」と話している。