兵庫県丹波篠山市の篠山小学校の校庭にあり、昨年8月の台風で根元から折れたプラタナス(モミジバスズカケノキ)。樹齢140年近いとされた「校木」であり、地域のシンボルでもある木は、今年4月にオブジェとして「復活」した。その校木の中からカブトムシの幼虫が見つかり、学校で飼育していたところ、成虫になって卵も産んだ。「校木は折れてしまったけれど、違う形で命がつながっていた」―。関係者の間で喜びが広がっている。
同校出身者なら誰もが遊んだことのある木。近年、樹勢が衰えており、同校PTA「育正会」が中心となって再生事業に取り組んでいた矢先、昨年の台風で根元から折れた。
在校生はもちろん、出身者らも悲嘆にくれたが、地元の造形作家・水上雅章さんによって2基のオブジェに生まれ変わり、校内に設置された。
最初に幼虫が見つかったのは昨秋のこと。水上さんがオブジェにするため、表皮を水で洗浄していたところ2匹の幼虫を見つけた。
その後、オブジェが設置されてすぐ、「ボトッ、ボトッ」っと、オブジェの近くで不思議な音。教職員が確認すると、オブジェの中からさらに6匹の幼虫が出てきた。
プラタナスが立っていたころか、倒れた後か、いつ産卵したものかはわからないが、「幼いころから虫が好きだった」という同校の讃岐貴洋教頭が飼育担当となり、手塩にかけて育てた。
すると計8匹中7匹が成虫に。さらに雌雄がいたため、産卵も確認された。
児童たちは、「よく生きていたなぁと思うし、命がつながっているみたい」と喜んでいる。今後、秋ごろには孵化した幼虫を希望者にプレゼントする予定という。
プラタナスは倒れた時点ですぐに挿し木をしており、順調に生育しているものもある。土壌改良も行っており、いずれは植え直す計画。
讃岐教頭は、「命の大切さやつながりを児童たちが感じてくれたらうれしい」と目を細めている。