昨年10月に開館した兵庫陶芸美術館(篠山市今田町上立杭)を取材でたびたび訪れる。美術に造詣が深いなどとはとても言えない身だが、展示作品の数々にはいつも理屈抜きで楽しい気持ちにさせてもらっている。「理屈抜きで」というのはそのままの意味で、素人目で見ても単純に面白いのだ。 例えば、肌に焼成の過程でできた火ぶくれが浮かぶ鎌倉時代の丹波焼の壺「猩々(しょうじょう)」。表面を覆う大小のいびつなこぶが今にも動き出しそうで、グロテスクさと同時に『生命』のようなものを感じた。 「砂の聖書」(荒木高子、1979年)は、砂に埋もれ風化していく聖書を表現したオブジェ。神話の一場面のような神々しい雰囲気が漂い、しばらく見入ってしまった。壺「氷解の島」(松井康成、1980年)は、色の異なる土を板状に重ね、球に近い形の壺をつくったもの。独特の技法で作られた表面は、モザイク様に荒れた複雑な表情だ。 開催中の特別展のなかで気に入ったものをあげた。他にも魅力的な作品があり、行けば一つはお気に入りができるだろう。時間が空いた休日があれば、ぜひ足を運ぶことをお勧めします。(古西広祐)