西紀小学校で先日開かれた、「食育」に関する研究発表会のパネルディスカッションで印象的な言葉があった。「日本には、村からまちに出ることは出世であるという思想がある」。コーディネーターの有識者による問題提起である。 コーディネーター氏の言葉通り、「都会志向」が日本特有のものかどうかは、私は分からない。しかし、日本人が農業や食べ物に重きを置かないのは、村を軽んじるこの思想が背景になっている、という解説には説得力を感じた。 かくいう私も、「出ることは出世」とまでは考えないが、なんとなく「まちは良いところ」と思っている部分がある。丹波で暮らし、地域の魅力を広く伝える仕事についている身としては、先の言葉の後に続いた「無意識のうちに、村や農業を捨てている」という指摘が耳に痛かった。 余談だが、プロ野球がオフに入り、トップ選手の大リーグ移籍に関するニュースに触れるたび、この話が頭をよぎる。大リーグが都会、日本球界が農村-そんな構図に見えてしまうのだ。「挑戦だ、がんばれ」と喜んでいいのか、空洞化を招く流出だと憂うべきなのか。ファンとしては複雑である。(古西広祐)