池さらいの知恵

2007.01.30
未―コラム記者ノート

 篠山市東木之部地区の「池さらい」は、「乗本(のりもと)池」で毎年10月の第1日曜日に行われている伝統の行事で、池の水を抜いて網などでコイを捕獲した後、競りにかけるというもの。前年に黒鯉と色鯉の稚魚を200匹ほど放しており、コイの他にフナやヘラブナ、モロコ、ジャコ、川エビなども数え切れないほど揚がっていた。 実はコイ獲りと競りは『おまけ』で、本当の目的は用水池にたまった泥を外に出すこと。水門を開けて水量を減らしておいた池に大勢の人が入って魚を獲ることで、泥が外に流れ出るというわけだ。「ただの作業では面白くないので、コイ獲りという『遊び』を加えた」のが始まりだそうだ。昔はこの魚が貴重なタンパク源でもあった。 池に入っている大人たちは、かつては魚好きの少年だったのだろう。ウシガエルを投げつけられた時は大変こわくて一目散に逃げたが、きっとコイ獲りが楽しいのだろうと思った。「今の人は泥の中に入るのを嫌がるし、ポンプで汲み上げれば泥出しはできるが、昔の人の知恵を引き継ぎたい」という自治会長の言葉に重みを感じた。(徳舛 純)

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