衆院選が、きょう投開票される。国政選挙のたびに、大学時代の出来事を思い出す。 「選挙権」を行使できるようになって初めての参院選を2カ月ほど先に控えた年の事。同い年の知人から「誰に投票するか決めてる?」と、電話がかかってきた。彼とは、1年ほど前に一度、日払いのアルバイトで一緒になったきりの仲だった。「いやあ、投票行かへんかもしれへん」と、あいまいな返事で交わすつもりだったが、「決めてないんやったら、僕の応援しとるところに入れてくれへん?迎えに行くから」と、まくしたてられ、仕方なく「分かった」と言ってしまった。 そんな約束はすっかり忘れ、投開票日であることすら忘れ、下宿で寝ていたら、本当に車でお迎えが来た。 悪いとは思ったけれど、結果的に、彼が太鼓判を押す候補者と政党名は書かなかった。大して親しくないのに、家まで投票に行こうと誘いに来る人が勧める人物を信じることはできなかった。 選挙のたびに電話がかかってきていたが、今回は連絡がない。初めて心静かに政策に耳を傾けられる気がする。自分だけの考えで意中の候補に一票を投じたい。(足立智和)