兵庫県丹波市議会予算決算特別委員会がこのほど、昨年度の一般会計決算を不認定とした。市の「空き家利活用地域活性化事業」の補助金交付で市が不適切な事務を行っていたことなどが理由で、交付団体は補助金の返還を求められる可能性がある。一方、団体の代表は、「市に言われたままに申請から手続きをしたのに、結果、不正をしたように言われるのは納得がいかない」と憤っている。
空き家を都市との交流や住民間交流に使い、地域活性化につなげる同補助金は、上限300万円交付するもの。昨年度は、同市の春日地域の2団体に300万円ずつ、柏原地域の1団体に約220万円を交付した。
このうち春日地域の1団体について、▽補助金を団体名義でなく代表者個人の口座に振り込んだこと▽代表者が空き家回収の工事費を金融機関を通さず、現金で業者に支払っている▽補助金の流れが適切であることを証明する振り込み依頼書などの提出がなかったこと―などが不適切事務と指摘された。
また、団体の会則から、交付要件の「地域を基盤とする団体」の要件を満たしていない可能性も浮上。市は補助金の返還を求めることを含め関係者と協議する。
同市は一昨年にも豪雨災害の復旧関連で補助金の不正受給があった。鬼頭哲也副市長は、「代表を含め、団体の構成者が信頼できる人たちだったので、会則は陳腐でも大丈夫だろうと決裁した。判断の誤り。大いに反省している」と述べ、谷口進一市長は、「身を切られるようにつらい。2年前の教訓がなぜ生かせなかったか、原因を本格的に調査し改善策を公表できるようにする」とした。
団体代表「私を悪者にして幕閉じようと」
一方、補助金の返還を求められる可能性がある団体の男性代表者が、丹波新聞社のインタビューに答えた。代表は、Iターンし、市内で自営業をしている。今回の件では、友人が経営する会社が春日地域で始める事業にプロデューサーとして関わった。以下、男性の話。
「昨年春、知人から空き家利活用の補助金があることを聞き、市住まいづくり課から書類を取り寄せた。開業準備で忙しく、その件は忘れていたが、秋になり市から『どうしますか』と照会があり、もう1度書類をもらいに行き、友人の会社名で申請した。会社名での申請はできないと断られ、市から、地元自治会に話をし、自治会から申請してもらうことはできないかと助言を受けたが、『できない』と断った」
「すると、市から『任意団体を作れませんか』と言われた。そんなやり方があるのかと思い、自分と仲間と、地元の2人に名前を書いてもらい、任意団体を作って申請した。団体で市に助成金を申請することは、地元の2人にさらっと伝えた程度で丁寧に説明しておらず、覚えていないかもしれない。お金の話で関係を壊したくなかった」
「補助金で、昨年度末までに改修を終えた。完成検査の時に、『団体の口座はありますか』と聞かれたので、ないと言うと、『個人の口座でいい』と市の担当者に言われた。今年度になって、職員が何度も面談に来るようになり、初夏になって『工事業者への支払いは、現金でなく、振り込みでしてほしかった』と言われた。私は『なぜ支払う前に言ってくれなかったのか』と言った。私個人の口座に補助金を振り込んだことも良くなかったということだが、職員が『いい』と言うからそうした」
「『9月議会を乗り切りたい』『このままでは乗り切れない』『協力してくれ』と聞かされた。市に『メンバーが集まって情報共有しているところを見たい』と言われ、今月4日に改修した家に集まった。地元の2人とは日ごろから顔を合わせばあいさつをする関係だが、団体として集まったのはその時が初めてだった。実行部隊は、私ともう1人。地元の2人には地元との調整役で入ってもらっている。動くのは我々2人なので、4人集まる必要はないし、ひとつひとつのことに4人で情報共有ができていないと、団体として体をなしていないというのはおかしい」
「今月19日に職員が会いに来た時に『市が団体に受給資格がないと判断すれば、補助金の返還を求める』と言われた。補助金がなくても我々は困らなかった。なぜ『任意団体は作れませんか』と言ったのか。補助金の申請受付を断ってくれていたら、今のように私たちが困ることはなかった。間口を広げ、申請を通したのは市のミス。補助金は全額、空き家の改修に使い、地域活性化に貢献している。市の都合が悪くなり、私を悪者にして幕を閉じようとしているように思われて仕方がない。呼んでもらえるなら議会で話したい」