帰宅途中、毎晩のようにシカに出会うもので、すっかり慣れっこになってしまった。そんな私でも、イノシシを見ると「おっ」と身構える。イノシシに出会うことは、まだまだ新鮮な体験だ。 23日の夜、親1匹、子5匹のイノシシ一家に遭遇した。目の前を黒い大きな物体が横切り、その後をちょこちょこと小動物が続いた。道路の端まで来た時に、茶色の集団が立ち止まった。溝だ。 行き場をなくしたうりぼうがちゅうちょしている姿を収めようと車から駆け下り、シャッターを切ったところ、1匹が音もなくジャンプした。高跳びなら記録40センチといったところ。助走なしできれいな弧を描き、見事対岸に着地した。 「これは珍しい。空中に浮いているところを撮影し読者の皆さんにお知らせせねば」と、にじりよって決定的瞬間をものにしようとしたところ、暗闇の中から「ブフォッ」「ブフォッ」と不気味な鼻息が。親の威嚇だ。 「ツノで刺されたらどうしよう」と弱気の虫が騒いだせいで、あと一歩が踏み出せなかった。現像した写真を見ると、写ってはいるものの、掲載できるような代物ではなかった。地元猟師によると、イノシシは同じ道を通る習性があるそうだ。華麗にジャンプするうりぼうの姿を撮影し、お届けできるよう鋭意努力しますので、今しばらくお待ちを。(足立智和)