「伺います」「参ります」は共に謙譲語だが、どう違うか、すぐにわかる人はまずいまい。ところが、専門家に説明してもらうと確かに違う。▼課長が部長に報告する場合、「社長の家に伺いました」「社長の家に参りました」いずれでも言えるが、行った先が課員だったら、「課員の家に参りました」とは言えても「課員の家に伺いました」とは言えない。▼伊丹市で開かれた「ことば文化交流シンポ」で、文化審議会の「敬語の指針」答申の趣旨説明をした蒲谷宏・早大教授は「敬語は尊敬語、謙譲語?、謙譲語?、丁寧語、美化語の5種類に区分される」と指摘。2種類の謙譲語の例として、この「伺う」「参る」を挙げた。▼「敬語は話し手と話し相手と、第3者との関係の中で決まる。種類分けが大事なのではなく、敬語の用法や働きを的確に理解することが重要」というわけだ。敬語使いの難しさを改めて知らされたが、ここで筆者が日頃気になっている、ずっと単純なことを一つ。▼文部大臣が「総理もおっしゃっております」、文部省課長が「大臣もおっしゃっております」、市役所課長が「市長もおっしゃっております」と記者会見や議会の答弁で例外なく話すのは、トップをよほどお客さん扱いしている故かも知れぬが、やはり「申しております」が正しいだろう。隗より始めてほしい。(E)