ルーマニアの伝承である―。天地創造の際、上帝が人間に与えた寿命は30歳だったそうだ。代わりに言語をもらい、両足で直立することを許されたが、短い寿命には大いに不満だった。▼そこでまず、ロバから寿命をもらい、50歳まで生きられるようにした。次いで、同じように犬から寿命をもらって70歳まで、さらにサルからももらって、70歳を超えても生きられるようになった。その結果、人間は30歳までは苦労知らずだが、50歳まではロバのようにあくせく働き、70歳までは、人の影を見ても泥棒と思って大声を出し、70歳を越せばサルのように背中が曲がることになった。▼首相に就任した福田康夫氏は71歳。伝承によれば、背中が曲がる年齢だ。その背中でこれからの日本を背負う。▼この背負うという行為。身体論を専攻する斎藤孝明治大学教授は、「踏ん張るや、腰を入れるという技をふくみこんだ複合技」と指摘する。足の裏でしっかりと大地を踏みつける技がまず求められる。さらに、でこぼこ道でも体を上下動させないためには膝を柔軟に使うことが大切で、いわゆる腰の入った体勢が求められる。▼日本を背負い、課題山積のでこぼこ道を歩き出した福田首相。しっかりと踏ん張り、腰を入れてもらいたいが、もし肝心の背中が曲がっていれば、こころもとない。(Y)