新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言の対象区域に入った兵庫県丹波篠山市内の一部店舗で営業を取りやめたり、業態を変更するなど、”自粛”する動きが出始めている。自粛した店主らは、「もし、ここから感染が広がってしまったら怖い」と話す。背景には、11日時点でいまだ感染者が確認されていない地域に、一時的に市外から観光や買い物で訪れる人が増えていたことがあるよう。ただ、自粛に伴って収入がなくなることから、「国の対策に期待するしかない」と漏らす。一方、新たな取り組みを始める事業者もおり、「こんなときだからこそ、できることで地域に貢献したい」と奮闘する。
「感染が広がらないようにみんなが努力している中で、市外からのお客さんが多いこの店は、自粛すべきと考えた。今こそ、『動物と触れ合って癒やしを』と言いたいのが本音。市民の方だけならばありがたいけれど、判別もできない」
猫カフェ「くつろぎ古民家まめ猫」の中町結紀さんがつぶやいた。こまめに換気し、業務用の空気清浄機も導入していたが、緊急事態宣言を受けて8日から当面の間の自粛を始めた。
もともと大阪や神戸、福知山などからの常連が多かったが、2月末以降、他府県の客が増えた。大阪からの客は、「あっちは危ないから」と話していたという。
建物の改装費のローンやネコのえさ代など、客がいなくても費用はかかる。「”従業員”のネコには失業保険もない」と苦笑いし、「この先、どうなるのか。先が見えない。みんな苦しいと思う」と話した。
美容室「cotonova(コトノバ)」は、緊急事態宣言が出た7日、店舗の休業を決めた。同店代表の宮田真由さんは、「美容師は特にお客さんと接する機会が多くなる仕事。知らず知らずのうちに新型コロナウイルスがうつり、それに気づかないままお客様にうつしてしまうリスクが一番怖かった」と話す。
休業を決定した後、丸2日間かけ、翌日以降の予約を受けていた30人以上の客に、一人ずつ断りの連絡を入れた。
「連絡をしたとき、『また店が再開するのを楽しみに待っています』『応援してます』と、あたたかい言葉をかけられることが多く、自分の判断は間違っていなかったと思った」という。休業は来月の6日までを予定しているが、状況によっては休業期間を延長する場合もある。
「田舎だから大丈夫ということは絶対にない。自分が店を閉めることで、『新型コロナウイルスは怖い』という注意喚起にもつながれば」と話している。
スタッフへの給与は通常通り支給。国からの補償を期待している。
食事提供から弁当に
一方、ある飲食店は3日から店内での食事提供をやめ、弁当の販売に切り替えた。店主の男性によると、3月末の3連休、驚くほど客足が伸びた。ただ、車を見ると県外のナンバーが多い。
「感染拡大で客が減り始める中、初めのうちは『よかった』と言っていたけれど、県外から来る人の中に、もし感染者がいたらと思うと怖くなった。そのことで地域の人に迷惑や心配をかけるのも嫌。地域の人に喜んでほしいと思って始めた商売なのに」
そして始めたのが弁当の販売。常連や地域の人のためにと考えたもので、事前に電話で予約を受け付けたり、窓口で注文を受けて、車で待ってもらうスタイルにしている。
それでも売り上げは落ちる。「この業態もいつまでできることか」と悩む。 一方、ある飲食店は3日から店内での食事提供をやめ、弁当の販売に切り替えた。店主の男性によると、3月末の3連休、驚くほど客足が伸びた。ただ、車を見ると県外のナンバーが多い。
「感染拡大で客が減り始める中、初めのうちは『よかった』と言っていたけれど、県外から来る人の中に、もし感染者がいたらと思うと怖くなった。そのことで地域の人に迷惑や心配をかけるのも嫌。地域の人に喜んでほしいと思って始めた商売なのに」
そして始めたのが弁当の販売。常連や地域の人のためにと考えたもので、事前に電話で予約を受け付けたり、窓口で注文を受けて、車で待ってもらうスタイルにしている。
それでも売り上げは落ちる。「この業態もいつまでできることか」と悩む。
前年比5700台増
店主らが話す「県外の人が増えた」という印象は本当なのか。
市商工観光課によると、市営駐車場の今年1―3月の利用台数は計10万5965台。前年同期と比べて5720台増加している。
団体旅行の取りやめの影響で観光バスなどの大型車は半減している代わりに自家用車などの普通自動車が増加した。
篠山城大書院などを管理する一般社団法人「ウイズささやま」も、学校の臨時休校が始まった3月上旬から例年よりも県外ナンバーの車を見るようになったという。
ただし、団体ツアーはキャンセルが相次ぎ、現在、7月までゼロ。さらに、タレントの志村けんさんが新型コロナウイルス感染症で亡くなって以降は、個人の観光客も一気に減少したという。
緊急事態宣言の発令で、さらに減少傾向が続くとみられる。
オンラインで学習
学校が再び休校になったことを受け、児童、生徒や保護者らが懸念しているのが、「学力保障」。関係者によると、2009年の新型インフルエンザ拡大時にも一時、休校となったが、その際は成績が落ちたという。
塾も休講が広がる。ある学習塾は、宣言後、2週間の休講を決定。感染予防を徹底しながら、中高生は20日から、小学生は休校開けから再開する予定にしている。塾長は、「学力低下を考えると、開きたいのはやまやま。しかし、もしものことがあれば大変。苦渋の決断です」と話す。
一方、イングリッシュスクール「ラボ」は、3月中旬からインターネット上でビデオ会議ができるソフト「Zoom」を使ったオンラインレッスンに移行し、現在、9割以上が切り替えている。
ズームは顔を見ながら双方向で会話ができるだけでなく、画面の共有や書き込みなど、さまざまな機能がある。
さらに再び休校になったことを受け、「非常事態でも子どもたちにはなるべく通常の学習機会を確保してあげたい」と、休校期間中に限って、塾生以外でも市内の子ども限定で、誰でも無料でオンラインレッスンに参加できる体制を整備。
通常の英語と数学に加え、講師陣や教員を目指す同塾出身の学生らの協力を得て、国語や日本史、高校現代文、古文の講座も開設した。
塾長の西村源さんは、「新学期に進む大切な時期で、子どもたちも勉強したいと思っているはず。少しでも力になれたら」と話している。