新型コロナウイルス対応の支援にと、台湾南部にある屏東(ピントン)県から兵庫県丹波篠山市に大量の医療用物資が贈られた。両自治体とも農業が盛んな地域で、互いに「黒豆」が特産。豆を通した交流がきっかけとなり、海を越えた支援につながった。
贈られたのは、防護服100着、フェイスシールド100枚、感染予防ゴーグル100個、感染予防手袋2500組。市によると、日本円にして約12万円相当になるという。
屏東県は黒豆や果物、タピオカの原料などの輸出量が台湾随一の農業県。両自治体は2019年から同じ黒豆の産地として日本貿易機構(ジェトロ)を通じて交流を深めてきた。
同市ではこれまで同県からの訪問団を2度、受け入れ、日本の黒大豆産地の環境や農業技術、歴史・文化などを紹介。丹波篠山市はJA丹波ささやまが中心となって現地で協力体制を築き、同市の「丹波黒大豆」を台湾でPRする活動に力を入れている。
台湾では感染拡大の封じ込めに成功していることから、5月中旬に寄贈の打診があり、「今こそ日台が手を携えることで、この危機を乗り越えることができると信じている。わずかだが、感染防止に役立ててほしい」とメッセージが届いた。
8日、同市役所で寄贈式があり、酒井市隆明長が市医師会に物資を寄贈。送られてきた物資の箱には、両国の国旗とともに、「HEALTH FOR ALL(みんなに健康を)」の言葉が添えられていた。
受け取った芦田定医師会長は、「防護服などは私たちが注文してもほとんど手に入らない。非常にありがたく、感謝している。直接お礼が言いたかった」と言い、台湾を訪問して同県の潘孟安知事と親ぼくを深めたこともある酒井市長も、「当市では幸い感染者は出ていないが、今後も注意が必要で、物資はありがたい。これからも交流を深め、ともに農業振興に取り組んでいきたい」と話していた。
同市は潘知事へ感謝状を送付する予定。物資は医師会を通して市内の医療機関に配布する。