運転免許証の返納どう勧める? プライド尊重した声かけを【認知症とおつきあい】(4)

2020.06.27
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最近、高齢者の自動車事故が多発して、運転免許証を返納する人が増えている。本人から「運転辞めますわ」と自主返納する高齢者もあるが、総じて認知症の高齢者は、返納を勧めてもなかなか納得してくれず困っている家族が多い。

 当の本人は、「長年運転してきて今まで事故など起こしたことがない」「今でも昔と同じように運転ができている」「自分は大丈夫」―。そんな思いがあるのだろう。家族が勧めれば勧めるほど頑なに返納を拒む人や、車は危ないと認識していても自分のこととなると「なぜ辞めないといけないのか」と怒る人もある。
 また、免許証を返納した後でも、無理やり返納させられたと、家族や警察や診断した医師に不満を向ける人もある。
 仕事や農作業に欠かせない自動車。まして地方にとっては、買い物、通院、社会とのつながりに欠かせない大切な移動手段となっている。車に乗り続けたい気持ちがわからない人はいないだろう。
 しかし、自分の身はもちろん他人を傷つけることになっては大変だ。
 返納を勧める時は、家族が本人の気持ちに寄り添い、本人の身体を心配していることを伝えて、「事故を起こして痛い思いや辛い思いをしてほしくないから」「今まで無事故が自慢だったお父さんを誇りに思うよ」と、プライドを尊重した言葉かけをすること。さらに、車がなくなった後の支援を提案することも忘れないこと。
 時に家族よりも他人の方が、本人には受け入れやすいこともある。主治医、ケアマネジャー、介護サービスのスタッフなど周りの人の力を借りるのも良い。家族と関係者が共同して本人に訴えていくことが大事だ。
 「もうそろそろ運転やめましょう」と、やんわり、しっかりと繰り返される言葉かけが、高齢者の記憶ではなく心に響くようにしたい。免許証を返納したことを忘れて運転する方があります。車や鍵の保管にはご注意を。
 寺本秀代(てらもと・ひでよ) 精神保健福祉士、兵庫県丹波篠山市もの忘れ相談センター嘱託職員。丹波認知症疾患医療センターに約20年間勤務。同センターでは2000人以上から相談を受けてきた。

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