「竹やりでなぁ、やぁー、やぁーって突きよったんや」
3年前に逝った祖母が自宅で寝たきりになった時、ベッドの脇で戦時中の話を聞かせてほしいとせがんだ。祖母は終始、笑顔で話してくれた。
祖母の弟は南洋で命を落とした。日本にいたころ、息子を訪ねた曽祖父と曽祖母が隠れてゆで卵を差し入れたらしい。「偉いさんに見つかったんやけどな、『おい、うまいか?』てだけゆーちゃったらしいわ」。ありありと目に浮かぶ。
敗戦。「負けるなんて思わへんかった。舞鶴から敵が来るて言われて、向かいの山にこもろうってことになったんや。せやけど、隣のおばあさんは良い着物着て家に残るゆーてなぁ」。こんな出来事が、たった70年前にあった。
私の目に映った祖母は、来る日も来る日も畑に出ていた。おしゃれもせず、旅行もせず、趣味らしい趣味もなかった。ただ家のこと、子や孫のことをずっと心配してくれていたように思う。
今号から始める戦後70年連載。丹波人の証言を通して過去を知り、今を考えるきっかけにしてもらえれば幸い。(森田靖久)