新型コロナウイルスの感染が拡大し、いつ、誰が感染してもおかしくない状況だ。感染者や医療従事者らへの差別や偏見をなくそうという「シトラスリボンプロジェクト」の発信が共感を得て、兵庫県丹波地域でも少しずつ広がっている。
同プロジェクトは、愛媛県の有志が始めた市民運動。たとえウイルスに感染しても、地域で笑顔の暮らしを取り戻せる社会にしようと、「ただいま、おかえりって言いあえるまちに」をキャッチフレーズにしている。シトラスカラー(かんきつをイメージした色)のひもを使い、「地域」「家庭」「職場・学校」の意味を表す3つの輪があるリボンを作って賛同を表す。
兵庫県丹波篠山市では、篠山ロータリークラブがプロジェクトに賛同し、市内の児童生徒にチラシを配布するとともに、希望のあった学校にリボンの材料を提供している。西紀中学校と西紀北小学校ですでに取り組んだ。
西紀中は福祉給食委員会の活動として全校でリボンを作り、市内の病院や老人施設、市教委などにリボンとメッセージカードを届けた。同委員会の田中奈々恵委員長(3年)は「シトラスリボンの活動で、優しい心でいられる人が増えると思う。リボンを届けると、思っていた以上に喜んでもらえて、やってよかった」と笑顔で話した。
篠山ロータリークラブが取り組んだきっかけは、メンバーの一人で、コロナによる差別に問題意識を持っていた、兵庫医科大学ささやま医療センターの片山覚院長がプロジェクトを紹介したことだった。
片山院長によると、感染症には3つの要素があるという。▽ウイルスの感染▽不安の感染▽不安や恐怖が元になった、差別や中傷の感染―。人間の心理には、「見えないものへの不安」を「見えるものへの不安」に置き換えてしまう特徴があり、職業や住んでいる場所への差別や中傷につながってしまうという。
片山院長は「コロナ禍の今はある意味、百年に1回のチャンス。この困った状況を、子どもたちのいい学びの場に変えることもできるのでは」と前を向いている。
同県丹波市では、市人権啓発センターが、コロナによる差別を防ごうとチラシを配布。また、同センター職員と、市まちづくり部の管理職らがシトラスリボンを名札につけて賛同を表している。