兵庫県立丹波医療センター(同県丹波市氷上町、秋田穂束院長、275床)の脳神経外科に、4月から常勤医2人が、神戸大の医局人事で着任する。脳卒中や頭部外傷など頭部救急疾患の手術、入院の受け入れが再開される。前身の県立柏原病院の同科が2007年9月末で新規入院受け入れと手術を休止して以来、およそ14年ぶりの機能回復になる。同センターは、「医療崩壊前」の県立柏原病院の急性期病院の姿を取り戻す。
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、頭部外傷(頭を強く打ったときになる疾病の総称。脳挫傷、頭蓋骨骨折、急性硬膜外血腫など)の受け入れが広がる。
着任は、40代の医師2人の予定。看護師らスタッフが、手術再開に向け、県内の病院に同科の研修に出向いているほか、医療機器購入手続きなど、受け入れ準備を進めている。
いわゆる「医療崩壊」の影響を受ける前、県立柏原時代の同科は年間100件前後の手術、1万人前後の延べ入院患者、8000人前後の外来患者を受け入れていた。医師数は、多い時で3人だった。
常勤医が不在になった08年以降、非常勤医師が週2日―週5日外来を担当(現在は4日)。同科の手術、入院はゼロになり、年間約800―2000人の外来患者を受け入れている。手術が必要な患者は、丹波地域外の病院に紹介していた。
これとは別に、救急科と内科、週1回の専門外来の脳神経内科(2016年度に開設。年間外来患者約450―700人)で、手術適応がない患者を受け入れている。ただし、日勤帯限定で、夕方から翌朝までは受け入れが難しかった。
また、脳の場合、外から見ても症状の程度の見極めがつきにくく、判断に悩む傷病者は受け入れができなかった。常勤医の着任で、見極め部分で相談ができ、受け入れ可否の精度が上がり、必要なら手術ができる安心感から、患者の受け入れが拡大するものと見られる。
「脳の疾患は、時間との闘い。大きな安心につながる」
2013年に県立柏原病院院長に就任以来、「地域住民の期待が非常に強い、病院再生のシンボル」として同科医師招へいに注力してきた秋田院長は「丹波は脳血管疾患が多い地域。大学医局に必要性を認めていただいて、大きな課題にめどが立った」と安どする。「脳の疾患は、時間との闘い。医療機関が近くにあり、すぐ治療できることが一番必要。みなさんの大きな安心につながる。診療実績を重ねれば学会の専門医研修連携施設になれる。教育病院として若い医師に来てもらえる道も開ける」と喜んでいる。
中道典昭市消防長は、「搬送時間が短くなる」と歓迎する。
昨年、脳外科対応が必要と見込んで救急搬送した285人のうち、丹波医療センターへの搬送は55人。同科が充実している市立西脇病院(同県西脇市)が142人と半数を占め、福知山市民病院(京都府福知山市)が約30人、ドクターヘリ搬送もあった。
前身の兵庫県立柏原病院は同県丹波市、丹波篠山市の丹波医療圏域の中核病院だったが、2004年の新医師臨床研修医制度に端を発す「医療崩壊」で医師の引き揚げが続き、「崩壊前」43人いた常勤医師が08年には一時期18人にまで減少。17診療科を標榜していたが、入院できる診療科が内科、外科、産婦人科、小児科のみとなっていた。19年、同様に医師不足に見舞われた同市内の柏原赤十字病院と統合再編。赤十字病院は閉院し、県立柏原病院は市内に移転新築され県立丹波医療センターと改称、同年7月1日に開院した。現在27診療科を標榜する。