「コロナ禍の子育て 子どもとどう向き合う?」と題した催しがこのほど、兵庫県丹波篠山市の四季の森生涯学習センターで行われた。丹波篠山市子育てふれあいセンターの、2カ月―就学前の子どもを持つ両親、父親を対象にした事業「お父さんといっしょ」の一つ。夫婦、親子ら7組が参加。NPO法人生涯学習サポート兵庫の理事長、山崎清治さんが、質問を投げかけ、夫婦で考える時間を取りながら語り掛けた。要旨は次のとおり。
例えば、じゃんけんをして2人が出した指の数を足した答えを素早く言う「足し算じゃんけん」。大人がやると、足し算が楽になるようグーを増やして効率化させる。遊びとしては楽しくなくなる。子どもはもっと楽しくするにはどうしたらよいかと工夫し始める。
以前、ある催しで、子どもが楽しめるゲームをたくさん考え、2時間近く一緒に盛り上がった。催しが終わった後、1人の子が「もう遊んでいい?」と聞いてきた。ショックだった。その子にとっては言われたことをやっていただけで、遊びではなかった。遊びは「自分で考える」ことにポイントがある。
子どもが親を遊びに誘うのは、安心できる相手に心を開き、共感体験をしたいと思っているから。好きな人をデートに誘うのと同じ。映画を見たり、食事をしたりして共感したいと思っているから誘う。遊びは共感体験の塊だ。だから親子で遊ぶことは大切だと言われている。好きな人を映画に誘ったのに断られるとショックなはずだ。
マスクをする今の状況下。マスクを取れるのは家族の関係だけ。表情豊かに遊んでほしい。マスクをしているときも、意識して目尻にしわを作り、笑っていることをアピールしてほしい。「3密」を避ける暮らしの中で、相手の表情を見て安心して話をする、自分の役割を感じる、互いに励みあう、共感するといったことが少なくなっている。家族内ではそういう場面、時間をつくることが必要だ。
感染対策と社会活動を天秤にかけ、個人の環境、価値観などにより自ら考え、決定する力が必要になる。誰かに言われたからではなく、自分で考えることが、コロナ禍ではますます必要になる。特に価値観は人との関わりや経験から身につくもの。今の子は価値観ではなく、ルールで考える傾向にある。いき過ぎると、“自粛警察”のように正義の押し付けになる。子どもたちは遊びを通じて失敗し、考え、価値観を身につけていく。
親はつい、「お風呂に入るの?入らないの?」と2択で聞きがち。「どうする?」という聞き方で、3番目の選択肢を与えると、自分で考えられるようになる。また技術の進歩などで、今ある職業の49%はなくなるといわれている。主体的に生活を営むためには、ますます自分で考えることが必要になってくる。
親に何かできるか。遊びの中で人と関わる力をいかにつけてやれるかを考えることだ。親も価値観を持つ必要がある。人から言われた子育てではなく、自分で考え、決めた正しいと思う子育てをすれば、考えられる子に育つ。