発達に支援が必要な子どもたちをサポートする兵庫県丹波篠山市の「市児童発達支援センターわかば」(旧畑小学校)が、開設から丸6年を迎えた。言語発達の遅れや集団生活に適応しづらいなど、さまざまな悩みを抱える子どもたちと保護者を支援しており、学校現場と連携した掘り起こしや職員の充足によって、必要な支援に応じて行われる各種教室などの実施件数は増加傾向。同センターは、「早期の支援が改善につながる。改善が緩やかであっても、子どもたちが自信を持って生活を送れるように支援していく。ぜひ気軽に相談して」と話している。
指定管理者の社会福祉法人「わかたけ福祉会」が運営。保育士や言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士など19人の職員が発達を支援している。
就学前の幼児を対象にした「発達支援保育」では、特性に応じたプログラムを展開。集団になじめない子どもに対して、小さな集団や個別で関わり、適応力を身につける。昨年度からは給食の提供や屋外遊戯場の利用も始め、食べることや遊ぶことを通した支援も行っている。
言語聴覚士が担当する「ことばの教室」は、言語の発達や発音に課題がある子どもが利用。文字が書かれた積み木などを使ったり、語彙力を高めるためにしりとりをしたりする。
姿勢が保てなかったり、細かい作業が不得意だったりする子どもには作業療法士による「感覚運動教室」、コミュニケーションや行動のコントロールが苦手な子どもには、遊びやゲームを通して社会的技能を獲得する「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」。ほかにも保護者が子どもを理解し、よりよい家庭環境を整える「保護者支援」や、専門医に心配事や気になることを聞ける「医療・発達相談支援」など、多角的に事業を行っている。
センター長の山下誠さん(64)によると、早い段階で支援を行うことで、大幅に改善する子どももいるそう。改善が進まない場合でも、職員とのコミュニケーションから自信が芽生え、学校や園での生活の負担が軽減したケースもあるという。
開設した2015年度に710件だった発達支援保育は、20年度889件。同じく15年度に956件だったことばの教室は、20年度1556件となるなど、全ての事業が増加傾向にある。背景には、センターの人員が増え、受け入れ体制が充実したことに加え、学校や園の教諭らが支援が必要なことに気づき、保護者と相談してセンターにつなげる仕組みが整ってきたことがある。
利用した保護者からは、「授業中にじっと座っていられず、発達に問題があるのではと心配になっていた。1年間利用し、相手の立場を理解できるようになっている」「泣き叫ぶ、たたく、蹴るなどの行動があり、育て方が悪いのかと悩んでいたが、今では子どもを誇りに思い、私も子育てに自信がついてきた」などの声が上がっている。
山下さんは、「支援が必要な子どもたちの行動を分析し、褒めて育てる。小さな目標を決め、スモールステップで達成していけば、自信が持てるようになる。子どもや保護者、地域の思いを大切に、事業を進めていきたい」としている。