名峰三尾山の麓を目指して高台へと登っていく。本殿の高みからずっと広がる下方を俯瞰してみる。旧国領村がさながらすべて見渡せる素晴らしい眺望である。この寺の欄間に中井権次一統の彫り物があると聞いて訪れた。
本殿の左右にそれぞれ2面の彫刻が目に入った。左側2面のうちの左の欄間には、大きな波の上を飛んできて下で待っている雛鳥に接近する海鵜の親の姿がある。右の欄間には大きな波頭が3つも立っている上を同じく海鵜の成鳥が飛翔している。右側の欄間それぞれには、松の木に体を休めている鶴、大きな松の木の間を飛び去ろうとしている鶴の彫り物が設えられている。垢抜けし、独特の飴色をしている。さらによく視ると、裏表とも彫刻がなされていることだ。作者の卓越した技能の表れだ。左右の欄間それぞれの左隅に中井権次正貞の銘がある。また、本殿の木鼻には、重厚な獏の一対の姿が目を奪う。
元高校教諭 岸名経夫