雲海に浮かぶ天空の城として、大人気の竹田城の山裾に佇む真言宗の名刹である。城下町の常として、寺町通りにあるほかの寺院よりも高台に位置しており、竹田小学校の裏手を登って行った所にある。竹田観音寺山を借景にして、ここの庭園がすばらしい。よく手入れされ、植生も落ち着いたものである。
この寺の特色は、工芸品として市の指定文化財になっている転輪経蔵があることだ。佛教の教えをまとめた佛教聖典を納める八角柱の書架の中心に軸を入れて回転し、これを回すことで仏に近づける、いわば摩尼車と言うべきもので、その蔵が寛政10年(1798年)に落慶されたと伝わる。ここの梁間中央部には、宝珠を握り、口を大きく開けた右方向を睨む竜。木鼻には、唐獅子と獏、一方の端には別の竜。竹生島文様の、海の上を奔る2羽の兎。5代目中井丈五郎正忠と相方の久須善兵衛正精の力作である。
元高校教諭 岸名経夫