東日本大震災から11日で11年となった。東北から遠く離れているものの、兵庫県丹波篠山市は震災後、市民からの寄付金などを原資に「復旧復興支援基金」を創設し、現地に向かう復興ボランティアや、東北の人々との交流事業などの市民活動を後押ししてきたほか、福島原発事故の影響で同市に避難移住してきた人々の家賃も補助してきた。ただ、時間の経過とともに寄付が減少し、基金も枯渇。現在は家賃補助のみを行っているが基金が底をつくため、2022年度で制度を廃止する見通しとなった。補助を受けてきた福島出身の人々は、「支えてくださる皆さんの気持ちがうれしかった。本当にありがとうございました」と感謝している。
基金は震災が発生した11年度に創設。市に寄せられた寄付金の中で、「市や市民が行う支援活動に充ててほしい」と要望があったものを選別した上で、市の一般財源から同額を上乗せ。1万円の寄付なら2万円分の支援につながるという仕組みで積み立ててきた。
19年度まで行ってきた市民活動への助成は1団体につき上限50万円を助成。これまでに社会福祉協議会が実施し、市民が現地に赴くボランティアバスの運行や、支援活動に取り組む市民団体への補助などに使われた。
近年では東北の人も招いた音楽祭の開催や福島から親子を招く保養キャンプ、農業高校の生徒が現地に赴き、市特産の山の芋栽培を通して現地の人々と交流する事業などがあり、震災当初の復旧支援から交流へと内容がシフトしていた。
また、原発事故の避難対象区域などから避難移住した世帯の家賃補助にも使われてきた。市内にはこれまで6世帯が避難移住しており、現在は転出した人や自宅を購入した人などを除いた3世帯が補助を受けている。
基金への積み立ての半分となる市民からの寄付金は、初年度の11年度が約1180万円だったが、翌年には約8万円と大幅に減少。13年度には大口の寄付があり約219万円、14年度は再び減少し、約2万円となったが、15年度には「伊達政宗」を名乗る市民から600万円の寄付があった。
事業や家賃補助に使用しながらもおおむね1000万円前後で推移してきたが、17、18年度の寄付はゼロ。19、20年度にはそれぞれ2―3万円の寄付があったが、21年度もゼロだった。
寄付がなくなることで基金残高が減少し続ける中、少しでも支援を長く実施するため、20年度から市民活動への補助金は取りやめ、家賃補助のみに切り替えた。それでも21年度末の基金残高は約86万円となる見通し。3世帯への補助が年間約90万円となっていることから、22年度末で補助を終えることになった。足りない数万円は一般財源から充て、年度途中での終了は避ける。
家族で避難移住してきた住民は、「一時、補助が終わりそうになった時は『当然。仕方ない』と思っていたけれど、市民の方々が声を上げ、市も補助を延長してくださった。親身になって応援してもらい、本当にうれしかった。『ここにいてもいいよ』と言ってもらえたような気がした」と感謝する。
ここまで長期的に支援活動や避難移住者を支えてきた自治体は珍しい。市市民安全課は、「たくさんの市民が熱い思いで活動をされ、純粋に『すごい』と感じたし、震災を機に生まれた東北の人々とのつながりも、市民からの寄付があったからこそ」と言い、「避難されてきた方々も支えていきたいと基金を活用してきた。ここまで続けられて良かった」とした。
助成金を活用した経験があり、今も自費で東北の人々と交流している男性は、「活動資金があったからこそ、東北の人々との絆をより深めることができたし、現地で得た学びを市民の皆さんに伝えることもできた。寄付をしてくださった皆さんには感謝しかない。これからも東北との縁をつなぎ、また市民にも還元していきたい」と話している。