イノシシによって掘り返され、穴ぼこだらけになっていた兵庫県丹波篠山市にある県立丹波並木道中央公園内の芝生の修復工事が完了し、被害を受ける前の姿をほぼ取り戻した。対策として、同公園敷地の境界となる山の尾根伝いに設置されている獣害防止柵を強化したほか、同公園周辺を重点的に、地元猟師が狩猟を展開。同公園によると、イノシシによる掘り返し被害は「ほぼなくなった」といい、対策が奏功している。
昨年11月上旬から、約70ヘクタールの敷地(うち7割は森林)の中で、来園客が多く利用する広場や歩道沿いなど、およそ3ヘクタールが掘り返された。
現地を確認した丹波篠山市担当職員は、敷地内に設置している獣害柵の下から侵入している痕跡があったため、成獣の集団による“犯行”と推測。県森林動物研究センター(同県丹波市青垣町)によると、餌となる土の中のミミズや昆虫を狙い、芝生を掘って穴を開けているという。
近年にない大規模な被害に遭ったため、県は、芝生の修復工事と獣害柵強化にかかる費用約300万円を昨年度の補正予算に計上。修復工事は、2月21日―3月25日にかけて行われた。
獣害防止柵は、公園内の「三釈迦山」の尾根伝いに設置されているものを強化。約280メートルにわたる柵の下部にL字型のプロテクトフェンスを取り付けた。柵の下を掘って侵入するのを防ぐ狙いがある。
また、被害を受けて丹波篠山市は、市猟友会に対し、公園敷地外の周辺地域で重点的な狩猟をするよう協力を呼び掛けた。その結果、10―3月の半年間で15頭を捕獲した。
同公園の梶村徳全所長は「利用者の方に、以前と同じようにのんびりと楽しんでいただける芝生広場によみがえった」と安堵。公園独自で広場周囲に設置している防護用ネットの増設も検討中といい、スタッフによる獣害柵の定期的な巡回など、今後も対策を続けていく。
同研究センターは被害が激減した要因として、「柵の設置に捕獲といった、基本に忠実な対策が徹底されたこと」を挙げる。「イノシシは警戒心が強く、学習能力も高い生き物。侵入場所にわなを設置すると出没数が一気に減ったという例もある。柵点検や捕獲活動をやめてしまうと、『この場所は安全』と再び学習してしまう恐れがある。餌を求めて年中走り回っているため、対策の継続は欠かせない」と話している。