文化庁はこのほど、地域に根付く食文化を「100年フード」と名付けてPRする新制度で、全国の郷土料理など131件を認定。兵庫県丹波篠山市内からは同市発祥の「ぼたん鍋」と、それを継承する団体として丹波篠山観光協会が認定された。また、15件のみに贈られた有識者特別賞も受賞した。
100年フードは、▽地域の風土や歴史・風習の中で育まれてきた▽世代を超えて受け継がれている▽継承することを宣言する団体が存在する―の全てを満たす地域固有の食文化が認定される。
江戸期以前から伝わる「伝統」、明治・大正以降の「近代」、昭和以降で今後100年の継承を目指す「未来」の3部門で、全国から212件の応募があった。ぼたん鍋は、猪肉が縄文時代から食べられていたことなどから「伝統」部門で認定された。
猪肉を地野菜と共に各店こだわりのみそやだしで煮込むぼたん鍋。明治期に「イノ鍋」として料理旅館で提供されていた歴史があり、かつて駐屯した陸軍歩兵第70連隊が滋養食として好んで食べていた。その後、昭和初期に篠山小唄の歌詞募集で語呂が良いようにイノ鍋からぼたん鍋に変更され、肉をボタンの花に似せて盛るようになった。
同協会によると、丹波篠山のイノシシが栗やマツタケ、黒大豆などを食べる「美食家」であり、味、栄養共に優れていることや、市内約40店で提供されていることなどが評価されたとみられる。
認定により、ロゴマークが使用できるほか、100年フードの公式ウェブサイトや文化庁主催のイベントなどでPRの機会が与えられる。
同協会は、「最近はコロナや豚熱によって打撃を受けているので、さらに盛り上がるように認定を追い風にし、日本人なら一度は食べたことのある料理にしていきたい」とする。ぼたん鍋のパンフレットなどにロゴマークを掲載し、このほかの活用も検討する。
同協会の堀成志会長は、「歴史を紡いでくださった先人の努力と素晴らしい地野菜を作られる生産者、提供いただいている協会員の日々の積み重ねがあってこそ」と感謝し、「認定を機に関西、そして日本を代表する丹波篠山ブランドを強烈にアピールしていきたい」と意気込んでいる。