兵庫県丹波市柏原町見長の中華料理店「大連飯店」(友常美智代社長)が、「介護食」の提供を始めた。かむ力やのみ込む力が弱い人のために、柔らかさや形状を工夫することで、誤嚥の発生や食べにくさを解消する。中国の国家資格「薬膳師」の資格を持つ料理長、今藏楓さん(30)が、食べる人の体調や能力をヒヤリングした上で、食材やメニュー、調理方法などを決める。今藏さんは、「加齢や病気で『みんなと同じように自由に食べられないから家におるわ』ではなく、家族や仲間とテーブルを共にして笑顔を分かち合ってほしい。日々、介護をしている人にとっても癒やしのひとときになれば」と話している。
「まごころ(丹)を込めて対応したい」という思いから、介護食のメニューを「丹心」と名付けた。
介護食は、人それぞれの体調や病状に対応したいわばオーダーメイドメニューのため、利用者は、来店予定日の1週間前までに同店との打ち合わせが必要(来店するか同店公式LINEを活用する)。メニューは、来店3日前までに利用者へ通知する流れ。
「丹心ランチ」は、主菜、副菜、スープ、ご飯、デザートで構成され、1500円。メイン食材をグレードアップした「丹心コース」は2500円。国産食材を使用した離乳食も用意している(200円)。
介護食は、常連客の声から生まれた。
同店で定期的に妻や家族と食事を楽しんでいた高齢男性が今年3月、胃を手術した。今藏さんは、食べたいものを自由に食べられない状況にある術後の男性や、「一緒に外食したい」という妻や家族の思いに応えようと、「満足のいく料理を提供したいので、なんでも相談を」と声を掛け、一緒にメニューや調理方法を考えていくことにした。
男性とその妻は、4―5月にかけて複数回来店。今藏さんは、そのたびに要望を聞きながら料理に工夫を凝らした。来店のたびに体調が良くなっていることを聞かされ、また、食べているときの夫婦の笑顔に、介護食の需要を確信したという。