「大作に取り組みたい」 法華経全巻を写経 書家がゆかりの播州清水寺に奉納

2022.11.11
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法華経3部経全10巻を写経し、奉納した足立さん=兵庫県丹波市柏原町柏原で

兵庫県丹波市柏原町柏原の書家、足立又男(青宙)さん(74)が、法華経8巻と開経、結経を合わせた全10巻を写経し、自身とつながりの深い播州清水寺(同県加東市、清水谷善英住職)に奉納した。1巻が18メートルあり、8巻分で6万9384字にものぼる大作。清書中は、盆も正月も休まず、平日5時間、土・日曜は8時間、毎日魂を込めて書き続けた。足立さんは「最後の1文字を書き終えた時は、爽やかな気持ちになった。格式のある清水寺で用いてもらうのは特別な思いがある」と話している。

足立さんは、若い頃から仏教に深い関心があり、法華経は30歳頃から訳注本を100回以上読んできた。

昨年の始め、「大作に取り組んでみたい」と、法華経全巻写経を決意。昨年が天台宗宗祖・最澄の1200年忌であることを知り、ますます力が入ったという。

奈良国立博物館所蔵の写経本や藤田美術館(大阪市)所蔵の作品集を参考にしたり、各地での展覧会に足を運んだりし、写経文字を収集。奈良時代の「天平写経」をもとに、ふさわしい字体を作っていった。

「絶対に間違いは許されない、妥協は許さないぞと固く自分に言い聞かせていた」と足立さん。1文字ずつチェックしながら、1年がかりで草稿を完成。比叡山延暦寺から写経用紙を取り寄せ、行間の隙間が美しさのポイントになることに着目。0・5ミリ単位で調整して下敷きを作り、清書に取り掛かった。

昨年11月からの清書は、平日は朝4時半に香をたいて開始。朝に3時間、夜に2時間書写した。土日は、約8時間、平均約1000文字のペースで進めたという。盆も正月も休まず、使いつぶした筆は80本。4月8日の釈迦生誕日に、満願を果たした。

末尾の願文には、新型コロナウイルスのまん延と、ロシアのウクライナへの侵略戦争という世界情勢に鑑み、「病魔平癒、世界平和」としたためた。

完成した写経は、京都の経師に依頼して巻物に仕立て、漆工芸の経立もしつらえた。

清水寺は、西国三十三所の第二十五番札所として知られる名刹。足立さんは、故谷洋一衆議院議員の秘書をしていた1976年、第1回選挙の必勝祈願に参拝したことで、同寺と縁ができた。朝粥会には200回以上参加し、寺伝の漢詩屏風を奉納したこともある。

写経本は当初、比叡山延暦寺に奉納するつもりだったが、清水寺の清水谷住職に相談したところ、「山火事で焼失したため、経巻がない。ぜひうちに」と声が掛かった。大講堂(本堂の1つ)に飾られる予定という。

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