但馬牛の品質を競う大会「兵庫県畜産共進会」(JA全農兵庫主催)がこのほど、淡路家畜市場(淡路市)であり、兵庫田中畜産(同県丹波篠山市味間奥)の「丸政」が、肉牛の部で最高位となる名誉賞を、昨年に続いて受賞した。大会後に行われた競りでは、過去最高額だった昨年の1200万円を更新し、1300万円で落札された。兵庫田中畜産代表取締役社長の田中久工さん(47)は「日頃からやってきたことは間違いじゃなかった。うれしいし、ほっとした」と喜んだ。
今年で104回目と、全国で最も長い歴史を誇るとされる共進会。同部には、県内各地の予選を突破した59頭が出場。神戸大大学院農学研究科の万年英之教授や、県農林水産技術総合センター畜産技術センターの生田健太郎所長ら5人が審査した。
丸政は、生後32カ月の去勢牛。体重は748㌔で、体高は139㌢。講評では「肩から背、腰にかけての張りが抜群。皮下脂肪は必要以上に厚くなく、名誉賞にふさわしい牛」と絶賛。田中さんも「但馬牛らしい脂質で、肉付きもよい。骨が細くしまっていてなめらか。牛が持っていた力を最大限に引き出せた」と胸を張った。
競りでは、フィリピン・マニラのレストランが2年連続で落札した。4日には、日本食肉格付協会(JMGA)が、丸政の枝肉を格付け。3万頭に1頭とされる、最高位のA5ランク12番に格付けされた。
田中畜産は現在、約200頭を飼育。こだわりは「挙げ始めるときりがない」と言いつつ、特に重要視しているのは飼料の栄養成分。飼料の製造は、愛知県の会社に委託。海外から仕入れたトウモロコシやムギ、大豆などを交ぜたもので、田中畜産の完全〝オーダーメイド〟。抗生物質は一切入れておらず、その分、飼育工程が多くなり、労力がかかる。田中さんは「僕らが“つくって”いる牛は、ゆくゆくは食品になるもの。体に良いものを消費者に届けたい」と話す。
「ものを言わない牛を相手に、何が足りていないか見極めるためには、毎日牛と向き合うしかない」と言い、毎朝4時過ぎには牛舎へと向かう。「牛が家畜であることは大前提。だからこそ、上質で高い評価の肉にしたい。そうすれば、粗末に扱われることがなくなる。それは、家畜として生まれてくる牛にとっても本望では」と語る。
神戸ビーフは、世界で絶大な人気を誇り、田中畜産も、ヨーロッパやアメリカ、東南アジアなどの国々に出荷している。
13年前、3年連続で名誉賞を獲得している。「常に良い牛をつくりたい、という思いでやっている。できれば、4連覇でも5連覇でもしたい。できるだけ世界中から良い評価をもらい、1300年の歴史がある但馬牛を後世に残したい」と力強く語った。