兵庫県丹波市春日町下三井庄で、盆栽専門店「BONSAI LABO Tamba」が開業準備を進めている。大阪市中央区松屋町からの移転。ビル営業から農地付きの広い物件を手にし、店舗での盆栽販売や教室の開催に加え、「花き生産農家」として新たな挑戦を始める。1月23―29日、無鹿リゾート(同町下三井庄)で、移転後初の盆栽展を開く。
宮里凜太郎さん(46)、こずえさん(36)夫妻が営む。
凜太郎さんは元商業カメラマン。フィルムカメラからデジタルカメラへの移行期に、ものづくりの実感が感じられなくなり、日本の伝統文化に関わる職業に就きたいと、盆栽業者で修業。2012年に開業し、5センチ程度の豆草ものから50センチ程度の中品盆栽まで、マツを中心にさまざまなサイズの盆栽を取り扱ってきた。盆栽販売のほか、ワークショップ、海外への盆栽輸出、ネット販売、広告業者への盆栽の貸し出しなどを手掛け、CMに使われたこともある。
移転前の店と住宅は「まっちゃまち」と呼ばれる大阪のど真ん中のビルの3、4階。30坪のビルの屋上で盆栽を育てていた。2人目の子どもを授かり、階段の昇降がしんどくなったタイミングで移転を決意。家の隣に畑があり、花き栽培がしやすい600坪の物件を見つけた。開けていて明るい雰囲気が気に入り、昨年2月に盆栽と共に引っ越し。現在、店舗、教室となる30畳ほどのスペースをリフォーム中。
大阪時代同様、競りなどで仕入れてきたものを整枝し、鉢に入れ、コケを張るなどして盆栽商品にして販売するほか、凜太郎さんは本格的に素材生産に乗り出す。モミジ、カエデ、ツバキ、サクラ、ウメ、コナラ、ブナ、ケヤキ、イチョウ、カキ、カリン、ヒメリンゴ、サクランボなど、何を植えようかと思いを巡らす。
「10年、15年は育てたい。時間軸が、野菜とは違うので、市に営農計画書を提出した際、理解してもらうのに時間がかかった」と笑う。
盆栽の醍醐味は、「小さく作って、大きく見せる」。商売道具は、針金とはさみ。伝統的な型を踏襲し、数年後にイメージした形になるよう、意図を持ってデザインする。
移転を機にOLを辞め、店に入るこずえさんは「地域の人あってこその私たち。一緒に盛り上がっていけたら。店に来る人がみんなハッピーになれば」と言い、凜太郎さんは「文化的なことが盛んな地域なのに、豊かな食に負けて文化が埋もれている。そこを引っ張り出し、楽しく生きるお手伝いができれば」と話している。
丹波暮らしは「ゆったりしている。何ひとつ不自由はなく、車で買い物に行け、子どもや荷物を抱えて階段の上り下りがなくなった分、便利になったとすら思う。大阪への恋しさは、一切ない。誰かが助けてくれる濃い付き合いが楽しい」と声をそろえた。
無鹿リゾートの展示は20点程度を予定。食事客が見学できる。一部販売もある。