兵庫県丹波市の氷上高校生が丹精して育てた花を多くの人に愛でてもらおうと、同校PTA事務局の久下不二子さんが、交流サイト(SNS)を通じて注文を取り、同市内を中心に自家用車で届けている。もともと、コロナ禍で休校になった2020年、生徒の販売実習ができずに花が廃棄される予定だったことを憂い、同校の許可を得て始めた配達。それが今に続いており、花と共に生徒や教職員の思いも一緒に届けている。久下さんは「氷上高校生が育てた花はブランド。とても手をかけて育てられていて、届けることで多くの人に美しさを知ってほしい」と話している。
自身のSNSで注文を受け付け、約1週間ごとに集計し、発注数を担当職員に伝える。ガーベラやパンジー、ベゴニア、シクラメンなど、生徒が育てている季節ごとの花を車に積み込み、届けている。丹波市内の個人や事業所などが中心だが、近隣の自治体に配達することもある。
事務局業務で同校に出入りする久下さん。20年4月、休校で生徒が登校できず、教職員がペチュニアの世話を続けていたが、行き先がない状態だった。これを心苦しく感じていたと言い、「生徒や先生が心を込めて育てていることを知っていた。廃棄だけは避けたかった」と振り返る。
SNSを通じ、つながりがある人に呼び掛けたところ、注文が相次いだ。自粛生活でガーデニングを始める人も多かったと言い、注文した人がリピーターになったケースも。人が人を呼び、一日に複数便、配達したこともあったという。
久下さんとやり取りした同校の実習助手、原田江身子さん(49)は、「コロナの流行当初は、販売することが本当に難しい状況だった。生徒が育てた花の美しさ、質の高さを、久下さんが広げてくれた」と話す。
花苗を育てる生徒は、「暑いときも寒いときも頑張って育てている。地域の人に届けてくれてうれしい」と喜ぶ。
最近は、販売実習など生徒が校外に出る機会が増えつつある。「販売も教育活動。生徒の実習の機会を奪わないよう、気を付けている」と久下さん。それでも、久下さんの配達が定着していることもあり、注文があれば届けることを続けている。「届けたときに、注文した人の笑顔が見られるのがうれしい。学校のブランドが根付くことにつながれば」と話した。