丹波栗の産地、兵庫県丹波市氷上町三方の山の斜面を利用した栗園で、トタンでこしらえた「いが栗シューター」が大活躍している。拾ったいがを放り投げると、「ガランガラン」と音を立てて転げ落ちる。拾った栗を持って勾配のきつい山を上ったり下りたりする必要がなく、等高線上に横移動し、シューターに放り込み、下でいがと分ける。「作業時間が3分の1になった」と、省力化に成功している。
丹波市内にIターン、Uターンした人でつくる「四つ豆会」の栗園。メンバーの一人、谷川三千男さん(76)が所有者から「銀寄」「筑波」が100本植わった園を借り受け、グループで管理している。無農薬栽培栗だ。
メンバー9人のうち、1人を除いて定年退職後の田舎暮らし組。70代が多く、3日に1度回ってくる栗拾い当番の「山登り」がしんどかった。元メンバーが雨どいの活用を思いつき、いがと栗を分け、栗だけを流していたが、メンバーの一人で同市丹波栗振興会会員の小松芳暢さん(77)が、いがごと流せばもっと楽ができると、「いが栗シューター」を発案した。国宝・姫路城改修工事で使われ、払い下げになったトタンを安価で購入し、一直線に15枚並べている。
勢い良く転がるうちに、いがから栗が飛び出し、いがから取り出す手間が省ける。いがを撤去することで病害虫の発生が未然に防げ、新しく落ちたいがを見つけやすく、野生動物に食べられるのを防げるなど、良いことずくめという。集めたいがは燃やす。
9月30日に同園で、生まれて初めて栗拾いを楽しんだ中谷洋二さん(69)は、シューターを「面白い」と言い、「さすが有名な丹波栗。こんなに大きいなんて。ご近所さんの分も買って帰ります」と笑顔だった。