兵庫県丹波市山南町谷川の田村雅仙(まさのり)さん(71)が、赤字により存続が危ぶまれているJR加古川線(谷川―西脇市)の地元の風景をイメージし、鉄道模型を走らせるジオラマを約2年がかりで完成させた。昨年12月に谷川駅で開かれたイベントでの展示に向けて製作。3時間途切れることなく見学者がいたほど好評を博した。山々の景色などをリアルに再現しつつ、店や建物が増えた町や若者でにぎわう公園など、「こうなってほしい」と願う駅周辺の「夢」を詰め込んだ。
谷川―久下村駅間がモデルで、150分の1サイズ。線路は約15メートルにわたり、実際の単線ではなく複線で張り巡らせた。走らせる模型は現在、加古川線で実際に使用されている3本と、かつて走った急行列車「だいせん」。スイッチを押せば走り、スピード調整もできる。
夏から秋にかけての山々は緑や赤、黄色のスポンジで、岩肌は発泡スチロールで再現した。実際に乗車し、車窓から撮った写真を参考にした。久下村駅で昨年8月に催された「久下村夜市」の様子も人形や屋台で模した。
同駅の旧駅舎も再現。そばには遊具のある空想上の公園を設け、降車した高校生や親子たちがにぎやかに遊ぶ。谷川駅周辺では、実際にはないコンビニや焼き肉店、アパートなどを段ボール紙で作り、設置した。
小学生の頃から鉄道模型やジオラマが大好き。「鉄道に乗る自分をイメージしてワクワクしていた」と笑う。
鉄道模型も多く収集する中で、鑑賞だけでなく、実際に走らせたいという願望が湧き上がり、9年ほど前からジオラマを作り始めた。自宅の8畳間で製作している80分の1サイズのジオラマでは、山南町や阪急梅田駅の風景、町並み、人々の営みを思いつくままに表現している。
加古川線の利用促進を目指し、谷川駅で開かれたマルシェイベント「谷川夜市」に向け、田村さんが副会長を務める久下自治振興会の役員から持ち運べるジオラマの製作を依頼された。仕事の合間を縫ってこつこつと製作に励み、当日3日前に完成した。
展示したジオラマに子どもたちは興味津々で、大人は「乗った」「あった、あった」と懐かしんでいた。田村さんは「自分と同じような人がたくさんいて、うれしかった」と顔をほころばせる。
高校時代は毎日乗車していた路線。同自治振興会内でも、駅周辺をどうにか活性化できないかと議論を重ねている。「私たちの世代はみんな乗っていて、思い出がある。『なくしてほしい』と思っている人は誰もいない。南海トラフ地震の発生時には、姫路や阪神間を結ぶ『心臓』になり得る」と熱を込め、「解決策を見つけられるよう、力になりたい」と話している。
ジオラマは自宅で保管中。